[ 愛してください







▼カナタマ←カゲ←オミ

プラチナ後

※性描写有ります!









どうして、こんな事になってしまったんだろう?


「カゲミツ、上の空だね」


自分は、ただ、タマキが好きで。大好きで。出来るならばタマキにもカゲミツ自身を選んで欲しくて。


「くっ…、ん、ああ…っ」


ただ、それだけだった。
人を想う奴なら普通の感情の筈だ。なのに、どうして。


「好きだよ、カゲミツ」


なんで、この男に犯されて愛を囁かれているのだろう。



――それは突然だった。





いきなりカゲミツの病室に現れたスパロウことオミは、今まで見たことも無い程の愛しさが詰まった表情でカゲミツに手を伸ばした。




(一緒に行こう。今のお前なら、俺と同じ場所に立てる)




結局――拒んだ筈のその手に、強引に引き寄せられてしまった。




「やめ…っ、ォ…ミッ!」

「可哀想なカゲミツ。そんなにタマキが好きだったのか?
…だけど残念だね、愛しのタマキは眠ってるカゲミツを見捨ててカナエと遠くに逃げてしまったんだよ?」

そんなこと言われなくたって解っている。そう怒鳴ろうとしたがすぐに口を口で塞がれて言わせてもらえなかった。口を閉じる間もなく舌がぬるりと滑り込んでくる。

「…はっ…あ…」

乱れる呼吸に何も考えられなくなる。
卑猥な水音に耳を塞ぎたくなる。

そして、何故かいいようにオミに流されてしまっている自分が憎らしくて、情けなくてたまらなくてカゲミツはぎゅっとシーツを掴んだ。

オミは不機嫌そうに眉を寄せる。

「駄目だな」

「……っ!?」

「何かに掴まりたいなら、俺だろう?」

シーツを握るカゲミツの手を強引に解いて自分の手を絡めれば、彼は満足そうに笑う。
まるでカゲミツと手を絡める事が嬉しいと言っているかのようなその笑顔に、何故かぎゅっと胸が痛くなった。
そんな自分に戸惑いながら、自分でもよくわからないまま、カゲミツは手を握り返し、視界を閉じたまま、身を任せた。



――――――………


体中が痛くて、気怠い。


指先一つ動かすのも億劫だと、行為の時のまま身に何も纏わずにカゲミツはベッドに沈むように横たわっていた。今は病院とはいえ深夜だし、夜の見回りももう来ないだろう。
何より上にはちゃんとシーツを被っているので、たぶん大丈夫だ。

そんな事を考えながら、首だけを横に動かして窓際で着衣を正している忌々しい男を睨みつけた。

「…オミ、お前なんでこんな事しやがった…」


声が掠れている。たぶん我慢していたのが逆に喉に負担をかけてしまったんだろう。


「…カゲミツと同じだよ」

「は…?」

いつの間にか、オミが目の前にいた。その目があまりにも優しすぎて、哀しすぎて、何も言えなくなってしまう。


――だって、この目は。


「ねえ、カゲミツ」


愛されたくて、でも愛されなくて。想われたくて、でもそれは望んだ想いではなくて。


――カゲミツと同じ目だ。



「俺を、あいしてよ」



重ねられた唇は、抱き合っていた時よりもずっと冷たかった。





end




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