[ ねぇ、ここにいるよ?






カナタマ/死ネタ
16話捏造/カナエを庇ったのがタマキだったら












誰かが泣いている。



周りを気にせずに泣き叫ぶその悲痛な声に聞き覚えがあって、ふと下を見下ろせば、何かを抱きかかえて泣いているその人物の顔が確認出来た。



――カナエ?



問いかけたのに、カナエは何も言わない。ただ、その腕に赤く染まった何かを大切そうに抱きしめながら言葉にならない叫びを上げている。よく、聞き取れない。

それにカゲミツも、隊長もナオユキもユウトも…何故かみんな悲しそうに顔を歪めてる。


どうしたんだ?

…カナエが、こんなに泣くところなんて珍しくて、少しだけ、怖い。
だけど本当に悲しそうで見ていられなくなって、その肩に手を伸ばし触れようとしたら。



――え……?



すり抜けた。

その瞬間、聞き取れなかった叫び声が、するりと耳に入ってくる。



「タマキ君、タマキ君…っ!」

―――俺?


「ごめんっ、ごめん、ごめん…!!」



――なんで謝るんだろう。俺はちゃんと此処に……



「守れなくてっ、ごめん…!!」


カナエが抱きかかえているモノが、見えた。


穏やかな眠るような表情でカナエの腕に抱かれているそれ。
左胸は真っ赤に染まっていて、よく見れば口端からうっすら赤い血が垂れている。




――ああ、あれは、俺だ。




カナエが俺を庇ってアマネに撃たれそうになって、それをレイが庇った。
そして、更に撃たれそうになったレイを咄嗟に抱きかかえて――――




やっと、思い出した。



「なんで…、タマキ、俺を…」

レイがぽつりと呟くけど俺はもう答えられない。でも、気にしなくていいんだレイ。


…俺は正直アマネやお前に嫉妬したりした。レイのように、カナエの傍から離れたくなかったんだ。でも、だからこそ思ったんだ。



――俺とお前が一緒だって。



「……?」


ふと、レイが見えない筈のこっちを見た。わからないけどとりあえず笑みを向けて、すり抜けても構わずにカナエの前に回り込んで頭をかき抱くように抱きしめる。



――ごめんな、カナエ。卑怯な別れ方で。でも、守りたかったんだ。お前を。お前の大切なものを。



だから、最後に。

(ちちんぷいぷい、いたいのいたいの飛んでいけ)



――俺が残してしまう傷が、少しでも減りますように。




「タマキ君………?」



泣き叫んでいたカナエが顔をあげる。俺が見えているのかわからないけれど、レイと同じく笑顔を浮かべて思いっ切り抱きしめた。






――忘れないで、泣かないで、カナエ。
俺はな。








「…タマキ君っ!!」





――ずっと、ここにいるよ、お前のそばに。







END


title⇒偏差値 さま


死ネタすみません…!
ただ泣き叫ぶカナエを書きたかっただけでした(←)





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