「じゃあアンタたちは無事に付き合うことになったってわけ?よかったじゃん。おめでとう」

「いや付き合ってないけど」

「は??????」


夏休みが明けて新学期、晴れて赤司と仲直りをした私たちは一緒に登校してきたのだが、教室に着いた途端それを目撃した中島が血相を変えて尋ねてきた。そう、私たちはお互いの気持ちこそ理解してるけど付き合ってない。


「なにそれ意味わかんない」

「仲直りしただけだってば」

「だって赤司君も名前のこと好きなんでしょ?なら何で付き合わないの?」

「だって付き合おうとか言われてないし」


好きとは言われた。でも付き合おうって言われたわけじゃないし、私も昔みたいに赤司の隣に居られたらそれでいい。


「ぬるい!ぬるすぎる!バッカじゃないの!?小学生の恋愛じゃないんだから!!!!そんなんだったら、いつか誰かに赤司君とられちゃうわよ!あの人モテるんだから!!!」

「えええ、それは嫌だな」

「だったら今すぐ赤司君と付き合え!!!」

「ええええ。無茶いうな」

「いいから話つけて来いやぁぁぁ」


まるで鬼のような顔で私の背中を蹴り飛ばし教室から追い出す。えっ、痛い。蹴られた背中を抑えながら渋々赤司のクラスまで行ったがいざ目の前にするとその足も止まってしまう。怪しげに教室を覗き見れば、赤司は席について静かに本を読んでいた。あいつぼっちかよ。今まで不仲だったので赤司のクラスでの状況なんてしらなかった。そんな中クラスの数人の男子が「赤司おはよう」と声をかけると赤司は笑って「あぁ、おはよう」と返す。なんだ、それなりにクラスには馴染んでるのか。安心した。まるで保護者のような気持ちだ。


「おはよう、赤司君」

「おはよう」

「宿題やった?」

「あぁ、済ませてある」

「やっぱり赤司君はやってるよねー。私忘れちゃった…」

「ノート見せてあげようか?」

「いいのぉー?ありがとう!」


待て待て待て。誰あの女!!ちょっと赤司と距離近すぎ!赤司の隣の席だからって私を差し置いて仲良くしてるなんて!いつも自分の力でやれって私にはノート見せてくれないくせに!!!ギィーーー!ムカつく!!教室のドアの隙間からハンカチを噛み締め赤司を睨んでいるとその視線を感じたのか赤司と目が合う。あ、やべっ。


「ちょっと待っててくれ」

「あ、うん…」


赤司は彼女に一言入れると私のほうに向かってくる。


「どうした?」

「…随分仲良い女の子がいるんだね」

「普通だと思うけど」

「そうなんだ」

「ヤキモチ?」

「…別に」

「それは残念だ」

「さっきからニヤニヤすんのやめてよ」

「で?僕に用があったんじゃないのか?」

「…やっぱり何でもない」


言えないよ。私たちの関係って一体どうなったの?なんて。恥ずかしくて言えるか馬鹿野郎。それになんか今の光景を見たらそんな話する気分になれなかった。




「赤司君!」

「…あぁ、すまない」


あの子が赤司を呼んでいて、赤司もそれに応えるように振り返る。「もういいか?」なんて言う赤司に私は黙って頷いた。


「バカ赤司」


ようやく隣に立てたのにまた遠くなっていく気がする。


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