「俺、やーのこと嫌いさ」

「あっそう。凛に好かれても嬉しくないし好都合なんですけど」


気に食わない。コイツが一言一言返してくる可愛くない言葉も、俺を見る憎たらしい目も。全部嫌い。


「それとやーの弁当にゴーヤ入ってんだろ?臭い」

「はぁ?お母さんが作ってくれたゴーヤに文句言わないで。アンタの香水のが何倍も臭いわよ」

「んだとブス」

「何よチンカス」


あーうざい。フン、と憎たらしい態度で廊下を進んでいくアイツの背中に向かって「転べ」と念じる。そしたら、数メートル先で本当に転んだ。ざまぁ。


「だっさ」

「………」

「………」

「………」


アイツのとこに駆け寄ってもアイツは転んだまま動かない。死んだ?


「廊下で寝んな」

「うるさい。私のこと嫌いなのに何で来たのよ」

「………」

「いつもいつも…私のこと嫌いなら何で絡んでくんのよ…」


何で…何で俺はコイツのもとに来てしまうんだろう。嫌いだ嫌いだとどんなに言っても、なぜか足だけは勝手にアイツのところに進んでしまうんだ。嫌いな筈なのに、気になってしょうがねー。あぁ、何だこの気持ち。むしゃくしゃする。

きっと俺はこれからもこの気持ちに気づかないだろう。いや気づきたくない。嫌いでいいんだ、アイツなんか。

甲斐と付き合ったアイツなんか。

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