「最近あの子とどうなの?」
「しつこいのだよ」
「こないだ映画デートしたんじゃねぇの?」
「行ってないのだよ。それにデートなんかではない」
昼休み、廊下を歩きながら面白がって俺に尋ねてきた高尾とか宮地さんとか高尾とか高尾とか高尾に心底うんざりしていた。あの子というのは俺の幼馴染で、この馬鹿たちは幼馴染との恋愛だかに期待を抱いている。はやく告白しろよ、もたもたしてっと誰かに取られるぞ、などと半ばからかいながら言ってきてうるさい。
「あいつはあり得ないのだよ」
そう言って無理やり話を終わらせたところになぜか彼女と出くわした。最悪だ。今日の占いは2位だったはずなのに。話を聞いていたのか、彼女は自分のことだとわかると不機嫌になった顔で俺を睨んで無言で横を通り過ぎた
「あーあ、真ちゃんやっちゃった」
黙れ高尾。そもそもお前たちがこんな話をしなければあいつとこんなことになることはなかったのだよ馬鹿め。あー、後悔。
その日の放課後。練習が終わって帰宅途中、目の前を歩いていた男女の女のほうに見覚えがあると思ってじっと見ていたらそいつが幼馴染だということに気づく。俺は無意識に走り出して彼女の腕を掴んで引き止めた。
「名前っ!」
驚いて振り返った彼女はいつもと違って見えた。あぁ、そうか化粧か。いつもより気合いの入った化粧、いつもより短いスカート、こいつの隣にいる男。なんだか腹が立って眉間にシワが寄る。そんな俺を見て彼女も眉間にシワが寄る。
「なに?何か言いたいことでもあるの?」
生意気に俺を見上げる彼女を見下ろして考える。言いたいこと?それならいっぱいある。この前の映画行けなくて悪かったとかその化粧似合ってないとか隣の男は誰だとか、昼休みに言ったあれは嘘で、つまり俺はお前が好きだってこと。