「白石、あっち行こう」
白石とデートしてたらユウジと蕪城さんを見つけた。なんでデートの行き先同じやねん。きっしょ。
「ユウジに声かけんでもええんか?」
「いい。無視」
白石は苦笑い。私は本当に性格の悪い女だと改めて思った。ユウジと蕪城さんがデートするって聞いて腹が立ったから、蕪城さんの好きな白石をデートに誘った。蕪城さん本人は違うって言ってるけど、私の目に狂いはない。だってこの前、練習見に行った時蕪城さん白石のことばっか見てたし。それに気づかないユウジは心底馬鹿だと思う。早く告白して振られろ。そして私に泣きつくがいい!この愚か者め。
「俺、蕪城さんと付き合うことになった」
翌日、学校でユウジから聞かされた言葉に驚いて私は椅子から落ちた。は?え?付き合った?まるで頭を思いっきり殴られた感覚。痛い。何がってそりゃあ私の心がに決まってる。
「嘘でしょ」
「何でここで嘘いうねん。ほんまじゃボケ」
「………あっそ」
「あっそって。おめでとうとかよかったねの一言もないんか」
「ない」
「何イラついとんねん」
「イラついてないし」
おめでたくなんかないのにおめでとうなんて言えるかボケ。意味わかんない。何で付き合うとかいう展開になってんの?てか蕪城さん、白石のことが好きなくせに何でユウジと付き合ってんの?私のユウジ慰めプランが台無しじゃない。
「あーもう!ムカつく!何なのアイツ!」
「来たで、ワガママ姫」
「誰がワガママ姫よ!ヘタレスター」
「ヘタレやないわ!」
「うっさいわね!ちょっとラケット貸して!」
放課後、どうにもこうにもイライラが収まらなくて私はコートに向かった。練習はまだ始まってない。ユウジは教室で蕪城さんとイチャイチャしてたしここにはいない。無理矢理、謙也から奪ったラケットを目の前に掲げて、白石に向ける。
「ムカつくから八つ当たりさせて!ちゃんと手加減してよ!」
「無茶苦茶やん…」
とか言いながらも白石は軽いサーブを打つ。私何気にテニス得意なの。ユウジと遊びでたまにやるから。しばらくラリーが続いていたら横からユウジの声がした。
「名前、なにしてんねん」
「あぁ?ユウジに関係ないやろ」
「何やねんイライラしよって。今日のお前むっちゃムカつくねんけど」
「それはこっちのセリフじゃハゲ」
「まだフッサフサじゃコラァ」
あー、うざい腹立つ。もう帰る。ラケットを謙也に押し付けてコートを出ようとしたらユウジに引き止められる。
「どこ行くねん?」
「帰る」
「何でやねん。いつも待っててくれるやん」
「……」
「一緒に帰ろうや」
「何でアンタと帰らなきゃなんないの!彼女の蕪城さんと帰ればええやん!」
「ほな、もうええわ。はよ帰れ」
どうして私ってこないに空回りばっかすんの?