「ねぇ」

「うわあ!?」

「何よ。人を化け物みたいに」


日曜の朝。俺はルンルン気分で髪をセットしていた。なぜなら今日は蕪城さんとデートやから。そんな時にいきなり鏡越しに映った名前を見て思わずギョッとした。なんやねん。いきなり現れんなや心臓停まるかと思ったわ。ちゅーか何でおんねん。人ん家に勝手にあがりよって、って言うても俺も人のこと言えへんけど。


「デートに行くユウジくんを見送りに来た」

「冷やかしに来ただけやろ」

「正解」

「うざっ。帰れ」

「私これから白石とデート」

「は?」

「私これから白石とデート」

「聞こえてるわアホ」


何でいきなり白石とデートやねん。ほんなら何で俺ん家におんねん。ちゅーか、それ言うためだけに来たんか?なんの意味があんねん。


「別に?意味はないよ」

「はあ?意味わからん」

「ただの報告」


それじゃあユウジも蕪城さんとうまくいくといいね、そう言っていつもより短いスカートをヒラリとさせて出ていく。あーなんかムカつく。


「ちょ、待てや」

「…なに」

「………」

「何って」

「いや、何もあらへんけど」


何で俺コイツのこと引き留めたんやろ?なんか今日の俺キモ。あ、蕪城さんとのデートの前やからテンション高いんかも。


「何もないなら離して」

「あぁ…」


あぁ、とか言っておきながら、なぜか掴んだ腕が離せへん。ほんま意味わからん。


「なぁ白石と付き合うてるんか?」

「付き合うてへんし」

「ほな何で白石とデートなんか」

「気分」

「………」

「なに?」

「別に」


あっそう。そう言って、するりと俺の手から腕を抜く名前。なんかうざい。モヤモヤするから帰っていくアイツを俺は黙って見つめる。お前ほんまに何しに来たんや。くっそ、何で俺がイライラせなあかんねん。ちゅーかスカート短いっちゅうねん。パンツ見えても知らんからな。







「…………」

「一氏くん」

「…………」

「一氏くん!」

「…えっ、あ!蕪城さん!」


イラついたままデートの待ち合わせ場所に行ったけど、振り返ったら可愛え可愛え蕪城さんがおったからイライラ吹っ飛んだ。ほんまかわええー!白いワンピースとかごっつ似合うとるし。あー鼻血出そうまじで。


「ほ、ほな行こか」

「う、うん」


蕪城さんの隣を歩く。めっちゃドキドキしてる。やばい超ええ匂いする。


「あ、」

「え?」


急に蕪城さんが立ち止まる。ぼーっと俺らの先を見つめる蕪城さんにつられて、俺も蕪城さんと同じ方を見る。


「苗字さんと白石くんや」

「………ほんまや」


肩を並べて歩く白石と名前。何や普通にカップルっぽい。いや付き合うとらんって言うてたけど。ちゅーかデートの行き先同じとかキモい。あーなんかムカつく。何で俺こないにイラついとんねん。馬鹿らしい。


「ねぇ白石、あっち行こうよ」


アイツが一瞬こっちを見た気がした


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