立海のおかしな奴らとの練習試合も終わり新たな一週間が始まる。月曜日って眠たいしダルいし早く休日にならないかなーってもはや休日が恋しくなる。何よりも学校内でユウジに会うことが気まずいの。ユウジがキスしてきたことまだ恨んでるから。ユウジはユウジで蕪城さんと気まずかったっぽいけど、今日の朝には仲直りしててすっかり仲良しこよしでした。手繋いで登校してたしまじでキモい。あーあ、こんなはずじゃなかったのに、なんて女子トイレの3番目の個室で携帯をいじりながら考えていた。つまり私はトイレに閉じこもって授業をサボっている。だって化学嫌いなんだもん。
「ははっ何やそれウケる」
「ホンマに笑い事ちゃうでー」
何やらきゃっきゃした女子たちの声が近づいてくる。彼女たちもトイレでサボリなんだろうか。なんか聞き覚えのある声が混ざっていた気がするけど、私はぼーっと彼女たちの会話を盗み聞きしていた。こう言うのって面白いじゃん。
「そういえばミサ彼氏と何で気まずかったん?」
「えっ、ユウジ?」
ん?ミサ?ユウジ?ちょっと待って。もしかしてこれ蕪城さんですか?しかもユウジの話かよ。ちょ、聞きたくないし。かと言って出ていくタイミングを失った私はこのままじっとしているしかない。
「それなんやけど、土日の練習試合ホンマに最悪やったんよ。2組の苗字名前っておるやろ?アイツホンマ邪魔やねん」
えええ、何か私の悪口言われてる。しかもアイツとか言われてるし。ユウジの前だとふわふわキャラなくせに。とうとう本性出しやがったな蕪城。
「テニス部と前から仲ええらしいけど、マネージャーの私よりみんなに慕われてるし、ユウジかて私とおるのにアイツのことばっかり。あの女のどこが良くてみんな寄ってくねん。ただの性格悪いブスやん」
おいブスは取り消せ。性格悪いは自分でも自覚あるからしゃーないけどブスは取り消せ。むしろ可愛いんですけど。これ至って真顔です。
「けどミサの本命は白石くんなんやろ?」
「まあね。ユウジと付き合うたのも白石くんに近づくためやし。ちょうどええタイミングでユウジに告白されたから、ユウジには悪いけど利用しちゃおうかなって」
は?何それ。もしかして好きでもないのにユウジと付き合ってたわけ?白石のことが好きだからそのためにユウジの気持ち利用したの?
「けどユウジも普通にかっこええから手離すの惜しいって言うか…」
「…ねぇ、何それ」
「えっ、苗字さん…!?」
気づいたらトイレのドア蹴飛ばして蕪城さんの前に立ってた。相当びっくりしてる目の前の蕪城さんを睨んだ。
「アンタそれ本気で言うてんの?」
「なっ…」
「本気で言うてんのかって聞いてんねん。今の言葉取り消せ。ユウジに謝れや」
私の眉間にぐっとしわが寄ったのがわかった。すると黙りだった蕪城さんが開き直ったように声を張る。
「…全部本気よ!私は白石くんが好きなの!それに気づかないで利用されてた馬鹿なユウジが悪いんじゃない!それにいつもいつもアンタが私の邪魔ばっかしてんでしょ。ユウジも白石くんも…テニス部のみんなだって全部アンタが奪ってくの!アンタなんかいなければよかったのよっ…!」
私がブチギレるのはその一言で充分だった。気づいたら私は蕪城さんの胸ぐらをつかんでいて壁に押し付けた。
「ざけんな。私のことなら何言うたってええけど、ユウジのこと悪く言うんやったら許さんで」
「なっ…!」
「ちゃんと歯ァ食いしばれやブス」
女子トイレが悲惨な事件現場となるのはこの5分後の話だ。