最悪だ。あんな形でユウジとキスするなんて。もう心がズタズタ。まるで握り潰されたかのように痛くて苦しい。涙は止まってくれないし、どうしたらいいかわからない。ひたすら走っていた私は校舎の角を曲がった。その瞬間、何かに当たって大きく跳ね返る。
「わっ、」
「いった…」
勢いよく地面に尻餅をついた。もう何なのよ。今日の占いは3位だったはずなのに、どうしてこう最悪なことばっかり。ぶつかった人物に何か文句言ってやろうとして見上げたら、まさかのブン太。何なのよアンタ私の行くとこにどこでも現れやがって。
「鬼ごっこは終わったのかよぃ?」
ブン太は転んだ私の視線に合わせてしゃがみ込むと手で私の涙を拭った。ここで素直にありがとうと言えたらいいんだけど、生憎素直じゃない私はそれが出来ない。
「好きで鬼ごっこしてんちゃうわ」
「ふーん。で?何かあった?」
ブン太が私の頭をくしゃくしゃと撫でながら尋ねる。そんな優しさに益々涙が溢れて、私は泣きながらブン太に今までのことを話した。ユウジと最近仲良くできないこと、蕪城さんがムカつくこと、ユウジにキスされたこと、他にもたくさん。ブン太はそれを黙って聞いていてくれた。
「私なんでユウジみたいな奴が好きなんやろ?あんな最低でアホな男なのに嫌いになれへんの」
「じゃあ試しに俺と付き合えばいいじゃん」
「だから何でそうなるの?」
「一氏より俺の方がいいかもって思うかもしんねーじゃん」
これ結構まじ、とブン太は笑う。そんなブン太に私は「どうせ可愛い彼女がほしいだけでしょ?」と問う。すると「まぁな!」なんて清々しい返答が来た。
「じゃあ無理だね。ブン太とは付き合わない。私、愛されたいの。幸せになりたい」
「なら、ちゃんと愛してやるって」
「無理だよブン太には。アンタ軽いし絶対他に女たくさんいるでしょ」
「実は今5人いる」
「ほらね。それに私を幸せにできるのはブン太じゃない」
「…………」
「ユウジしかいないの」
まぁ私の恋が報われることはないだろうけどね。ユウジは蕪城さんにぞっこんだし。悔しいけど現実をちゃんと受け止めてんのよ私は。それにユウジもきっと私のこと嫌ってる。最近ムカつくとかウザいしか言われてないし。
「えええ…俺振られた感じ?」
「そう。アンタ振られたの残念」
「俺を振った女は名前が初めて」
「私ブン太の歴史に名を残したのね」
「何かショック。俺、自分が思ってた以上に名前のこと好きだったのかも」
あーあ、仕方ねえから神奈川帰って可愛い彼女でも作るか!そう言ってブン太は立ち上がる。切り替え早っ!?まぁいいんだけど。
「コート戻ろうぜ。みんな心配してる」
「うん…」
ブン太が私の手を引いて歩く。私の一歩先を歩くブン太が背中を向けたまま言った。
「やっぱ可愛くても貧乳はちょっとな…」
飛び蹴りをする3秒前。