「蕪城さんって、彼氏おるんかな?」
「かぶらぎさん?誰それ」
「ほら、あの子や」
グラウンドで体育の授業を受ける生徒の中の一人を指差すユウジ。私は屋上のフェンスに身を乗り出し見下ろした。見つけた蕪城さんとやらは、ほんわかした雰囲気の子で私とは正反対のタイプ。
「あー、あの子か」
「知っとるんか?」
「体育の授業で一緒やから顔は知っとる」
「は?」
「1組と2組、体育一緒やし」
「……ほな、お前は何でここにおんねん」
「……えへっ」
私2組なんだけど授業サボっちゃった。だってユウジが屋上に行くのが見えたんだもん。でも、今ここに来たのは間違いだったかな。ここに来たせいで私は知らなくても良いことを知ってしまうんだから。
「俺、蕪城さんのこと好きや」
これが私が失恋した瞬間だった。
私はユウジが好きで、ユウジは蕪城さんが好き。恋愛とはこんなにも脆く儚いものだった。長年の片想いが終わった。はい御愁傷様。ユウジとは中学から仲良くなって、よく一緒にいるようになった。こうして高校に入ってクラスが違っても、ユウジは変わらず私の隣にいてくれると思っていたのだけど、違ったみたいだ。
「あ、蕪城さん転けた。ドジなとこも可愛え」
「私の方が可愛え気がする」
「黙れやお前、絶対蕪城さんやろ」
「真顔で言うなや」
性格は別として顔なら私の方が可愛え。私、自分で可愛えって自覚あるから。まあ蕪城さんも可愛えけど、私には勝てんな。こんな近くに可愛え女の子がおるのに何でユウジは気づかんねん。一回死ねや。
「なぁ、」
「何?」
「蕪城さんて意外にでかいんやな」
「は?」
何が?蕪城さんを凝視していると、走るたびに揺れるソレが目に入った。うわ、乳でか。
「ユウジ乳目当てか、やらしー」
「ちゃうわボケ!」
「じゃあ何よ」
「お前、少し分けてもろたらええやん」
「…貴様、まじで死ねよ」