「あ、千歳先輩と付き合うたんすね。よかったですやん、物好きがおって。滅多におりませんよ我が儘の貧乳好き」

「うん。とりあえず一発殴らせろ」


そんな会話が部室の中から聞こえて、俺は一瞬ドアノブを回すのを躊躇った。声の主はすぐにわかったし、「我が儘の貧乳」が誰のことかもすぐにわかった。っちゅーことはアイツ千歳と付き合うたってことか。ありえへん。しかも何かムカつく。アイツに彼氏が出来るとか。もしかしたら明日地球が崩壊するかもしれん。そしたら俺の大事な可愛い可愛い彼女とおれんくなる。あかんあかん。


「今すぐ別れろ」

「は?」

「あ、ユウジ先輩」


部室に入ってきた俺を見る名前と財前。名前に関しては俺を見るなり眉間にシワを寄せた。最近のコイツ何やねん。俺の顔見て嫌そうな顔しやがってムカつく。


「お前に彼氏が出来るとかありえへん」

「人の話盗み聞きしてたん?最低」

「お前の声が嫌でも聞こえてきたんや。耳腐った俺の耳に謝れそして別れろ」

「意味わかんないしキモいから死んで」

「お前が死ねや」


俺らの会話を聞きながら財前がため息をついて「アンタら仲ええのか悪いんかわからんわ」とか言うてた。アホかむちゃくちゃ仲良しや。ただ最近コイツが俺に敵意剥き出しやからこうなってんねん。


「お前に彼氏が出来ることで明日地球が崩壊するかもしれん」

「アンタ頭大丈夫?」

「そうなったらミサとおれんくなるやん」

「誰よミサって」

「俺の彼女やん。蕪城ミサ」

「……あっそう。帰る」

「は?何で最近待っててくれんねん」


昼休みだって一緒にメシ食わんし、俺の教室にあんま来いへんし、黙って一人で先に帰るし。俺ら何か前とちゃうやん。前は馬鹿みたいに笑っとったのに。最近は名前の笑顔すら見てない。


「あのさ、アンタ彼女いるんだから彼女と帰れば。昼休みも彼女と過ごせばええやろ。もう私は必要ないやん」

「何でお前が必要ないとか言う話になんねん。お前は俺の友達なんやからお前とおったってええやろ」


それに俺が誰と一緒におろうが周りにとやかく言われる必要はない。もちろん名前にも。


「誰と帰ろうが俺の勝手やん」

「私の都合は考えないのかよ」

「おん。それにお前しか帰る奴おらん。ミサはバイトやし」

「…ミサって誰」

「だから蕪城ミサや言うてるやん覚えろやボケ」

「あぁ…」


曖昧な返事をする名前。絶対コイツ覚える気あらへん。結局アイツは俺を置いてさっさと帰っていった。何やねんほんまムカつくわ。


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