一年生の正式な入部が決まり、本格的に練習が始まってから数日。
「おい、苗字。ちんたらしてねーでさっさと準備しろ」
相変わらず私はこき使われている。
「もー!やってますよ!ちょっと待っててください!」
「いちいち行動が遅ぇんだよ」
「はいはい、今行きますよ」
「はい、は1回でいいんだよ殺すぞ」
「すみませーん、退部届くださーい!」
とまあ、こんな感じで相変わらず部活はやめたい。
「まあまあ、苗字落ち着こ?大丈夫だよ、ちゃんと仕事してるし助かってるよ俺たち!」
「原くぅぅぅん!!!」
そんな中、私のプリンス原くんのおかげで私は今日もなんとか頑張れている。ありがとう原くん。生まれてきてくれてありがとう。そんな原くんの背中を見つめながらクソめんどくさいマネージャー業に励んでいると、トントンと肩を叩かれ振り向くと何者かの長い指が私の頬に突き刺さった。痛い。
「ちょっとぉ〜苗字チャン、もしかして俺の弟狙ってるぅ〜?」
振り返った先に兄のほうがいて膨らませたガムをパァンと割る。
「ええ!?狙ってるなんて!原くんは眺めてるだけで十分です!癒し!」
「そー。ならいいんだけど、気をつけてね〜ん。万が一のことがあったら俺花宮に殺されちゃうから」
「何で花宮先輩が出てくるんですか?」
「そこは自分で考えてちょーだい」
それだけ言って原先輩は練習に戻ってしまった。
「中間、テスト……?」
「初めて聞きました、みたいな顔すんな」
練習が終わり部室で各々帰る支度をしていたら花宮先輩の口から耳を塞ぎたくなるような単語が出た。
「来週の中間でもし赤点取れば、補習と試合の日被ってんだ。絶対赤点取るなよ」
ギクリ。その言葉に私と私の隣にいたザキ先輩の肩が揺れる。
「あのー…もし取った場合は…」
「そんな選択肢はない。絶対取るなよ」
「ううっ…」
「大丈夫だ、苗字。俺も今まで何とか切り抜けてきたから。花宮も瀬戸も頭いいし」
「そーなんですか!?」
「お前には教えてやんねーよ自分で努力しろ」
ケチだ。鬼だ。何でこの人私にはこんなに意地悪なんだろう。酷い。そんなことを思ってムッとしながら花宮先輩を睨んでみたけど鼻で笑われて終了。どうなる私の中間テストーー!!
「だったら苗字、俺と勉強しよ!1年は1年同士!俺の得意なところは教えてやるし!」
「原くぅぅぅん!!!さすが私のプリンス原くん!!!」
「プリンス…?」
「ううん、何でもない!ぜひご指導お願いします!」
救世主と言える原くんの優しさに泣きながら頭をさげる。原くんまじ私のメシア!原くん確かクラスでも頭いいほうだし、一緒に勉強してくれる相手が原くんならやる気も出る!中間テスト頑張ろう!そう意気込んだ瞬間、
「おい、明日から放課後バスケ部勉強会すんぞ」
花宮先輩によって爆弾が落とされた。
「花宮…お前言葉に責任持てよ…」
「今教えてくれないって言ったじゃないですか。私、原くんとお勉強するんで大丈夫です」
「全員強制参加だ。マネージャーが文句言ってんじゃねえぞブス」
「ブ…ブス…?」
「わかったな?」
ここは悪童の絶対王政☆