「苗字、バスケ部に入部するってマジ〜?」

「え?あ、うん。入ったというか…」


半強制的に入れられんですけどね、という言葉は飲み込んだ。話しかけてくれたのは同じクラスで隣の席の原くん。実はちょっと気になってる人でもある。今日もかっこいいな原くん。


「なんで原くん知ってるの?」

「兄貴から聞いた」

「兄貴…?え、まさか原先輩のこと?」

「そそ、原一哉は俺の兄貴だよ〜」


なるほど。通りでちょっと似てると思った。なんか話し方が軽いところとか。でも私は断然弟派かな。


「ちなみにオレもバスケ部ね」

「そうなの?よかった〜話せる部員ができて。あれ?でもどうして原くん練習でないの?」

「1年の正式な入部は来週からだけど?」

「え!?」


衝撃の事実。花宮の野郎!騙したな!!!私ムダに1週間早く働かせれてるの!?許さん。まじ許さん。あ、でも来週からということは今日部活に行かなくても私は悪くないんじゃないだろうか。そうだ、だって一年は来週からなんだし!というわけで、今日はさっさと帰ってドラマの再放送でも見よう!






「やぁ、苗字さん。そんな急いでどこ行くの?体育館はあっちだけど?」


花宮ログイン。放課後、急いで教室を飛び出した私の目の前になぜか現れた花宮先輩は爽やかすぎて逆に恐ろしい笑みを浮かべて私を見下ろしている。やべーーーー。怖い!目が合わせられない。合ったら殺される!他の生徒がいる限りその綺麗すぎる笑顔を絶対に崩さない彼の裏側は真っ黒であることを私は知っている。みんな気づいてくれ!


「ははっ、ちょっとトイレに、」

「そう、なら一緒に行ってあげるよ」

「え」

「ひとりじゃ怖いだろ?外で待っててあげるから」


完全に私を疑っている。いや怖いよ。なんで私花宮先輩と一緒に行かなきゃいけないの?何この絵面?意味わかんないよ気持ち悪いよ!!!


「や、あの、やっぱり大丈夫です」

「そう?ならさっさと部活に行こうか?」

「うわあああ!一年は来週からなんじゃないんですかー!?こんなの酷い!労働基準法違反!」

「うるせー黙れ呼吸を止めろ」


ニコニコと仮面を貼り付けていた花宮先輩は周りに生徒がいないとわかると一瞬で悪の顔に染まった。そして引きずられながら私は泣く泣く部活へ強制送還。また地獄が見えてきた…。


「あれー?苗字に花宮さん!」


部室の前まで来るとそこに原くんが現れた。花宮先輩に「ちわーっす!」と挨拶する原くんはやっぱりかっこいいザ・体育会系って感じ。


「よぉ、原の弟か」

「入部届け出しに来ました。来週からよろしくお願いします!」

「おう」

「苗字はもうマネージャーとして練習出てんだろ?」

「え、あ…うん(強制的に)」

「頑張ってるな苗字!ほれっ飴あげる」

「あ、ありがとう…!」


原くんが制服のポケットから取り出した飴を私の手のひらに乗せた。「頑張れよ!」と私の頭を撫でてから花宮先輩に挨拶をしてその場を去っていく。そこに残された私はただただ原くんの後ろ姿を見つめるだけだった。なんだ今の、かっこいい。頑張れって言われちゃった。こんな部でやっていける気がしなかったけど原くんの一言で頑張れそうな気がする!原くんからもらった飴はもったいなくて食べられないな〜なんて呟いた私を黙って見ていた花宮先輩が口を開いた。


「お前、あいつのこと好きなの?」

「え、や、好きっていうか…かっこいいなって…えへへ」

「ニヤニヤしてんじゃねぇよ気持ちわりぃ」


そう言うと花宮先輩は小さく舌打ちをして私が原くんにもらった飴を奪い取って口の中に入れてしまった。


「あーーー!せっかく原くんにもらったのに!なにするんですか!?」

「飴ひとつもらったくらいで喜んでんじゃねぇよ、うぜぇ」


花宮先輩は口に入れた飴をガリガリと噛み砕いて飲み込んでしまう。なぜ私は花宮先輩に怒られているのか。私なにか悪いことしました?その後、終始不機嫌だった花宮先輩に話しかける人はいなかった。


「苗字チャン、花宮になんかしたの?」

「え?なんで私に聞くんですか?」

「だいたい花宮の機嫌って苗字チャンで左右されるでしょ」

「???」


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