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勤務先の交番の窓から何気なく外を見る。雨が降りそうだ、と空を見つめながら考えた。灰色の雲に覆われた空は、先ほど見回りに出ていた時よりも段々と薄暗さを増している。嫌な天気だなあ、と先輩が零した。

「柏木、今日は早上がりだったな」
「はい。少し予定があって・・・」

優しく見送ってくれる先輩方に挨拶をしてから署を出た。まだまだ新人のひよっこである俺に対しても、先輩はとても優しくしてくれる。俺の祖父や父はすぐにでも俺に上の席を用意するつもりだったらしいが、激しい口論の末に、何とか断った。

俺は祖父や親の七光りではなく、自分の力でやりたかった。祖父や父の力を借りるのでは自分の力不足さをただ知らしめているだけだ。それに、俺はこの仕事に対して誠実に、誇りをもって臨みたかったのだ。

交番を出れば、夏が終わり段々と涼しくなってきた風が頬を撫でていく。あの暑さはいったいどこへ行ったのだろうか。俺は目的の場所へ向かうべく、歩く足を速めた。

そうして歩きながらスラックスのポケットから一枚のメモを取り出す。とある住所が書かれたそこは、俺がずっとずっと探していた場所だ。

住所を指でなぞり、ゆっくりと息を吐き出す。ここから少しばかり遠いそこは、電車を乗り継げばたどり着ける位置にあるが、仕事はいちよう溜まっていた有給を使って暫く休みを取っておいた。

急く足もそのままに、駅へと向かう。一人暮らしをしているマンションと家は便利なことに近い位置にある。マンションの前を通り過ぎて五分もあるけば、都心から外れ少しだけ寂れた駅が見える。俺は持っていたメモをしまい、自分の住んでいるマンションを通り過ぎようとする。

すると前から人が歩いてきた。顔を伏せて、足早に近づいてくる。俺は気にすることなく、顔を上げて歩いている。前から歩いてきた人間とすれ違う。すれ違う瞬間、何かを言われた気がしてふと目を向けようとした瞬間、ばちりと何かが弾けるような音がした。

悲鳴さえあげられないほどの衝撃にガクンとその場に膝をつく。関節に力が入らない。呻く俺を一人の男が笑って見下ろしていた。


「おやすみ、柏木」


その何処かで聞いたことのあるような声と共に首に走った衝撃に、俺は抵抗する間もなく意識を失った。




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