I wanna be your dog

仰向けの姿勢で、裸の足を大きく開いた男が丸めたハンカチをつめこまれた口で呻いている。昨日まで俺をゴミと呼んでいた同級生の宮原だ。金持ちでイケメンで性格は最悪。問題を起こせば金で揉み消す、それこそゴミみたいな奴。

高校での三年間、俺は宮原とずっと同じクラスだった。何故か俺は一年の頃から宮原に目をつけられており、いじめられていた。俺は騒ぐタイプじゃないしどこをとっても平均か、平均以下だから標的としては最適だったのかもしれない。

殴る蹴るは当たり前、トイレに連れ込まれて宮原の誰に突っ込んだかわからないちんぽをしゃぶらされたこともあった。アンモニアのにおいにえづき、涎が垂れる俺の顔を眺め宮原ははあはあと鼻息を荒くしながら腰を振っていた。見上げた顔は紅潮し、目が潤んでいる。気持ち悪い。ぐちゅぐちゅと口をかき回されながら、病気になったらどうしようとそればかりを考えていた。

「どういうことだよ」

朝登校するなり下駄箱で待ち伏せしていた宮原に腕を捕まれ、空き教室に連れていかれる。宮原は顔を怒りに染めながら、ズボンのポケットから取り出した写真を床に叩きつけた。俺は取り敢えずそれを拾って見てみる。
「お前と一緒に写ってる男は誰だって聞いてるんだよ!」

写真を眺めていたらてを叩かれた。持っていた写真がひらひらとまた床に舞い戻る。俺は首をかしげた。

「誰って、恋人だけど」

写真は先週の週末のもので俺と俺の大好きな人が一緒に写っている写真だった。

「こい…びと…?」

俺の答えに宮原は顔を真っ青にして目を見開いた。そんな宮原を尻目に俺は散らばっていた写真をかき集める。俺の大好きな人は余り写真が好きじゃないからなかなか撮らせてくれない。だからこんなに綺麗に写っている写真はかなりレアだった。

「用ってそれだけ?もう授業始まるから帰ってもいいかな」

あとこの写真、いらないならほしい。といいかけて、背中から床に叩きつけられた。押し倒された、と言うのが正しいのかもしれない。

「ゴミが調子に乗るんじゃねえよ!お前が恋人なんて作って良い分けがねえだろうがっ」

宮原は俺に馬乗りになり、襟を掴みながら至近距離でそうわめき散らした。唾が降りかかるのが不快で思わず顔をしかめれば、それすらも気に食わないようで頬を思い切り張られた。

ぱん、と高い音が聞こえてじんじんと後からやって来る痛み。宮原は何かを叫んでいる。俺は時計を見た。HRまであと5分しかない。宮原が舌打ちをした。再び叩かれる頬。

「何よそ見してんだ屑っ!」

宮原はまるで般若のような顔で俺を見下ろした。俺には何で宮原かこんなに怒っているのかまったく理解できない。俺が宮原の怒りに染まった顔をじっとみあげていると、彼は俺の襟首を掴んでいない方の手を俺の顔の横に伸ばした。そして拾いあげたものを俺の眼前に差し出す。

「…塵みたいな存在に加えてホモとか気持ち悪いんだよ。お前は一生、塵らしく俺の奴隷でいればいいんだっ」

そう言った宮原はぐしゃりと、手にしていた写真を握りつぶした。おれは目を見開いて握り潰された写真を見る。俺の反応が気に入ったのだろうか。宮原は口を笑みに歪めて、写真を拾いあげては握り潰すという動作をバカの一つ覚えのように繰り返した。

「最後の一枚だ」

宮原は嫌な笑みを浮かべると、襟首を掴んでいた手を離し、両手で写真を持った。俺は彼が次にどんな行動をとろうとしているのかを理解し、膝で胴と一緒に挟み込まれ固定されている腕をどうにか動かそうともがいた。宮原は嬉しそうに笑った。焦りを浮かべる俺を嬉しそうに見下ろしていた。そうして、持っていた写真を勢いよく二つに裂いた。笑顔で写っている大好きな人が二つに避けるのをみて、俺はぷちんと何かが切れるのを感じた。

思い切り体をねじって体勢を崩した宮原を床に落とすと、彼が体勢を整える前に形の良い頭を掴み床に叩きつけた。悲痛な声で呻く宮原を仰向けにひっくり返し、その体を跨ぐようにして上に乗る。さっきとはまるで立場が逆転だ。

宮原のしていた学校指定のネクタイを抜くと顔を押さえていた宮原の両手を掴み、痛みで無抵抗なそれを固く縛り上げた。露になった宮原の顔は悲惨だった。高い鼻は鼻血で真っ赤に染まり、歯で切ったのだろう口のなかも血で溢れている。

「汚い顔」と思わず俺が呟くと宮原は傷ついたみたいに目を見開いた。その時、授業開始のチャイムが学校全体に鳴り響く。俺はタメ息を吐いて、宮原を見下ろした。

「…宮原のせいで皆勤賞がダメになった」

大好きな人に誉めて貰える筈だったのに。俺は宮原の汚い顔を叩いた。ぱしんと小気味いい音。俺は宮原を見ながら微笑んだ。

「鞄もここにあるし、今日は休みでいいや。」

遊ぼっかみやはら。答えるようにして男が呻いた。

近くに落ちていた宮原の鞄の中にはロープだとかローションだとかゴムが乱雑に積めてあった。もしかしたら宮原はこれを使って俺に何かするつもりだったのか。まあ丁度いいかと有り難く使わせて頂くことにして、暴れる宮原の口にポケットの中に入れていたハンカチを丸めて突っ込み、腹部を殴り付ける。

大人しくなったことを確認して、宮原の上から退くと掃除道具入れから箒を拝借しぐったりしている宮原のズボンと下着を脱がし、裸の足をM字に開脚させるとロープと箒で固定し閉じられないようにする。

萎れたちんこも孔も丸見えな格好に、宮原は力なく呻いた。きっと彼は暴力になんか慣れていないだろうからダメージは相当だったんだろう。普段の傲慢さとは余りにもかけ離れた姿は滑稽で、少しだけ可愛く思えた。

宮原の性格に加えこんな格好で大声をあげることはないだろうとヨダレなまみれたハンカチを抜いてやる。途端にえづき、口から垂れた涎をなめ上げる。そのまま慰めるように額に頬に口づけを落とした。嫌がると思った宮原は大人しく俺からの口づけを受けている。

試しに口にもキスをしてみる。宮原は嫌がらない。繰り返し繰り返し触れるだけの口づけを続けていたら、閉じられていた唇が微かに開いていく。空いた隙間から舌を捩じ込んで掻き回せば、おずおずと宮原から拙く舌を絡めてきた。

舌を甘がみしたり吸ったりしてやれば、鼻から甘い息を漏らす。舌を抜いて顔を上げれば、宮原はうっとりと溶けた目で俺を見上げていた。

「塵にキスされて嬉しいの?ちんこ起ってるよ」

さっきまで痛みに萎れていた宮原のちんこは開かれた足の間でゆるゆると立ち上がっていた。指摘してやれば嫌々と首を降る。まるで処女のような反応がおかしくて思わず声に出して笑えば、宮原は血で汚れた顔を少しだけ赤くして俺をぼうと見つめた。

「宮原ってさ」

その顔をじっと見下ろしたながら口を開く。

「俺のことが好きなの」

馬鹿みたいな疑問を口にした。途端に宮原は耳まで赤くした。それが答えを雄弁に語っていた。

「だからあんなに俺に構ってきたんだね」

そう言いながら起っているちんこを指で弾く。宮原は喉をのけ反らせた。

「俺のこと、好きって言ってみて」

硬く立ち上がり汁をこぼし始めたちんこをつつく。宮原はまたいやいやと顔を振った。俺は宮原に軽い口づけを落とす。嬉しそうにうっとりとする彼に俺はもう一度、同じ言葉を囁いた。


「どうしようか。仁さん、怒るよなあ」

俺の膝を枕にしてくったりとしている宮原の金色の髪をすきながら唸る。仁さんは俺の大好きな人で、三つ上の大学三年生だ。すごく格好良くて、優しいんだけど俺にたいしてめちゃくちゃ過保護で嫉妬深い。考え込んでいた俺の手が止まっていたのだろう。宮原が催促するように頭を手に擦り付けてきた。今日の朝までの傍若無人ぶりはいったい何処へ行ったのだろう。まあ可愛いからいいかと望み通り優しく頭を撫でてやる。

結局、あのまま宮原と最後まで致してしまった俺は今更だが大好きな恋人に対して何と説明していいか悩んでいた。浮気したなんて知られたらどうなるかわからない。かと言って、甘えてくる宮原を振り払う気にもなれなかった。

ぺろぺろと掌を舐める宮原を眺めながら、俺は恋人へのとっておきの言い訳を考えていた。




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