ある二人八 | ナノ
彼女はいた。
見ると、大してさっきと変わっていなかった。
膝に顔を埋めたまま。
・・・寝てる、のかな?
俺が肩を叩こうとすると、彼女は手が触れる前に奥に跳んだ。
「うっ・・・!?」
首筋に、冷たいなにかが当たる。刃物のようだ・・・。
前を見ると、すぐ近くに彼女の顔があった。奇麗な顔・・・でも、どこか違和感があるような気がする。暗くて顔がはっきりとは見えないから、確かめられないけど。
「なんだお前か・・・何しに来た。」
多少雰囲気は軟らかくなったようだが、彼女の警戒心はまだバリバリに感じた。
ていうかこの首筋に当ててるモノどけてクダサイ・・・。
「よ、様子見に・・・心配だったから・・・。」
「ふうん・・・。」
彼女はまだ疑っているようだったが、とりあえず解放してくれた。距離は置いてるけど。
夜風がとても冷たい。凍えそうなくらいだ。こんなところに何時間もいたら肺炎にでもなりそうだ。
「なあ、 ホントに来ないのかよ?絶対風邪ひくって!」
「行かない。」
「・・・来い。」
「行かない。」
「来い!!」
「行かん。」
「・・・・・・はあ。強情だなあ、おまえは。」
「・・・よく言われる。」
彼女はそう言って不満そうな顔をした。
「こんなところにずっといたら肺炎になっちまうぜ!?意地張らないで俺んち来いよ!」
「・・・意地は張っていない。そもそもあれは一般的に細菌性肺炎といって―――・・・っ。」
彼女がよろめく。
「どうしたっ!?」
なんか彼女の様子が少しおかしい。額を手で押さえ、眉間にシワを寄せている。
「・・・なんでも無い。それよりとっとと帰れ。風邪ひくぞ。」
「俺は大丈夫だっつーの!おまえの方がひいてんじゃねーのかよ?」
彼女に近づき、熱があるか計ろうとするが―――、
「やめろ触るな・・・っ!」
手を叩かれ、カッターを首の辺りに突きつけられる。
「熱があるかどうかぐらい計らせろよ!」
「君にそんな義務は無いだろ!?」
「義務がなくても権利ぐらいあるさ。」
俺も彼女も一歩もひかない。しばらくの沈黙。
沈黙を破ったのは意外なことに彼女だった。


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