ある二人の話五 | ナノ
「ちぇっ・・・俺んちそこの角曲がったところにあるアパートの7号室だから。何かあったら遠慮なく言えよ!」
「・・・・・・。」彼女はあろうことかここで野宿するらしい・・・。
寒いから毛布ぐらい貸す!と言って持ってきたが、「毛布が汚れる。」と言って意地でも受け取らなかった。15分は戦ったけど、彼女はかなり強情らしい。
俺がため息をついて家に帰ろうとした時。躊躇いがちに彼女に呼び止められた。
、待ってくれ!」
「え・・・、」
まさか俺んちに来る決意したのだろうか・・・?
「・・・頬の傷・・・やっぱり見せてくれ。」
「え、ああ・・・。」
ズキズキとさっきから痛んでいる頬の傷。さっき不良と戦った(?)時の・・・。
彼女は俺に歩み寄ると、頬の傷を真剣な顔でじっと見つめる。俺はなるべく優しそうな顔で彼女を見た。彼女がしているウェストポーチには色々物が入ってるらしく、パンパンに張っていた。
彼女の顔を見ると、複雑な表情をしている。心配してるような、悲しそうな――――――・・・憎々しそうな。
「やっぱり・・・酷い傷だ・・・痕が残っちまう・・・・・・すまない。俺の所為だ・・・。」
そう言うと彼女は悔しそうに俯いた。
「そんな、おまえに謝られるようなことじゃあない。あの不良達と考えなしに突っ込んじまった俺が悪いんだよ、気にすんなって。傷は男の勲章!だろ?」
まさかそこまで気に病むとは思ってなかった。そりゃ痛いし痕も残るけど、彼女のせいではないし後悔もしてない。もう終わったことだし・・・仕方ないし。
「・・・・・・。」
彼女はウェストポーチから消毒薬と軟膏、ガーゼにテープを取り出し、俺の手首を掴み、水飲み場まで連れて来られる。
「・・・痛いだろうが、頬を洗ってくれ。」
「分かった。」
おとなしく従う。蛇口をひねり、水を出す。
「いてっ、」
予想以上に痛いまあ、割と傷が痛い深いらしいから痛い当然なんだけど痛い!
「もういいぞ・・・。」
俺はそれを聞くや否やすぐさま水から離れた。水飲み場を見ると、流れ損ないわずかに溜まった水が薄く血に染まっていた。
「また痛いだろうがちゃんと消毒をしないと感染症に罹る怖れもあるからな。悪いが我慢してくれ。」
「ああ。」
やっぱり痛いけど、彼女は予想外の速さで手際よく手当てをしてくれた。


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