六 | ナノ
帰り道。
放課後までの間、何人かは滝澤のことをからかおうとしていたが、ほとんどを秋山に払ってもらった。
あいつ、この学校の番長だもんな、ああみえて。
いまどき番長っていうのも珍しい気がするけど……。
「……。」
「ん? どした?」
不意に滝澤が立ち止まる。
その視線の先には、よたよたと足を引きずっている汚れた子鳥が居た。
「足、怪我してるみたいだな。どっかでひっかけでもしたか……」
「……。」
滝澤は静かに首を左右に動かした。
厳しい目で。
「違う?」
『・・・・・・捨てられたんだ。そして、そこいらのチンピラに虐められたんだ。』
そう書いて滝澤は悲しそうに子鳥の頭を優しく撫でた。
子鳥は元気少なながらも綺麗な鳴き声で唄った。
「その辺の店に鳥のエサあるぜ、買ってくるよ」
「えーと鳥のエサ……どれが良いんだ?」
ペットコーナーには3種類ぐらいのエサがあった。
しかしおれは鳥なんて買ったことが無いから、どれが良いかなんてわかるわけもない。
「紅蓮?」
かわいい声がしたので振り返ると、幼なじみの刀子だった。
なんだ、可愛いとか思っちゃったじゃんか。
「紅蓮、ペット飼ってたっけ? 全然知らなかったんだけど」
口を尖らしずずいっとおれの顔を覗き込んでくる。
かわ……、ていうか、なんで刀子に教える義務が発生してる!?
「いや、滝澤が小鳥拾ってさ。鳥店に入れるわけにはいかないからおれがエサと薬買いに来たんだよ。
でもどれが良いのかわかんなくって」
「ならわたしに任せなよ! わたし鳥飼ったことあるし。うーん、これが良いよ、よく食べたし」
そうして差し出された小さな餌袋を受け取る。
「さんきゅ!」
「ねえ、滝澤ってえっと……無口な滝澤?」
ん? こいつ知ってたのか、他クラスなのに。
「ああ。知ってたのか?」
「……同じクラスになったことがあったから。でも、……色々あって、来なく、なっちゃって……」
明るい刀子にしては珍しく沈んだ表情を見せる。
なにが、あったんだ……?
「なあ、なにがあったんだ? あいつ、自分のことはあまり話さないからさ、教えて欲しいんだけど……」
「……じゃあ、耳貸して。誰にも話さないでよ。絶対。わかった?」
「わかった」
きっとこんな人のいるところで話すようなことじゃないんだろう。
おれは頷いて素直に耳を傾ける。