四 | ナノ
教室に入ると、丁度休み時間になるところだった。
授業中の静けさの中、音を立てて入っていくのは忍びない。

先生に目をつけられやすいし、皆の視線は冷たいのや笑いをこらえたものばかり。
嫌になってしまう。

……まあ、遅刻しなきゃいいんだけどさ。

「滝澤の席は俺の隣だからな。名誉の席だぜ?」

「……。」

笑いかけては見るが、居心地が悪そうに周りをきょろきょろと見ているばかりだ。

そりゃそうだ、同じクラスとは名ばかりで、初めて見る顔ばかりだからな。

「おっす紅蓮、また遅刻か〜! もう連続50回はいったかあ?」

友達の秋山が人の悪い笑みを浮かべて俺を見る。

「ちげえよ! 48回だっつの!
勝手に増やすなよな!?」

「たいして変わんねえ……ん? その人は?」

秋山が指さすその先には、滝澤が居た。
そうだ、知らないもんな。

「この人は滝澤っていって、今まで来れなかったけど、同じクラスのやつ。
最近知り合ったんだ」

秋山は品定めでもするようにじろりと滝澤を見ると、にやりと笑った。

「そっかあ、オレは秋山舎人。よろしくな!」

「……。」

滝澤は声を出そうと口を開くが、出なかったことに気がついて、首を縦に振った。

「おとなしーやつだなあ。って、あー! もう先生来ちまった!」

教壇を見ると、担任の谷在家先生がなにやらプリントを持って立っていた。

ざわめいていた教室が徐々に静寂を取り戻していく。

「では、HRを始め……ん? 君は誰だね? 転校生という話は聞いていないが……」

「……。」

先生が尋ねるものの、言う、というか伝えるのは少々気が進まないようだった。

それはそうだ、自己紹介をするにあたってもまずは自分の障害のことを話さなければならないのだ。

あからさまなものならまだしも、表面上ではわからないので、本人が伝えなければならない。

障害者の全員が全員気にしているものでもないらしいが、それ一般のイメージとしては少数派だろう。

そして、滝澤は多数派だ。

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