リミットに | ナノ
悲鳴。パニック状態。尚も不安定に動き続けるバス。
私は運転手を席から引き摺り下ろす。
教師と生徒の非難するような声が聞こえたが、知ったことではない。
既に死んだもう使えないやつなど要らない。
私はブレーキをかけようとしたが、非力故に運転手を完全に席から離すことはできなかった。
アクセルは、かかったまま。
ブレーキは、運転手が邪魔で踏めない。
なら。
私は大抵、バスに乗る時は前の席に座っていた。だからわかる。
他人との会話に夢中になっていないからこそ。
あれを動かせば、扉は開く―――。
私は運転手のやわらかい肉を踏みにじり、扉を開閉するためのレバーを弾いた。
正面には、崖。
避けることは、できない。、急カーブ。間に合わない。
私は賭けに出た。
このままなら、落ちて確実に死ぬだろう。
でも、今外に飛んだなら助かるかもしれない。
だから、飛ぶ。



「・・・私は、助かった。」
無感情に呟く。
皆の入っていたバスはガードレールを突っ切って崖下へ落ちて行った。
バスはひしゃげ、わずかに赤いものが見えているような気がする。
「・・・私は、助かっていない。」
ここは雪山。山奥。
バスで、後何時間すれば着いたのだろう?
ここは雪山。山奥。
携帯電話は通じない。雪が、冷たい。
食料は無い。スキー場まで行けるだけの体力も時間も無い。
寒い。寒い。寒い。
寒い。寒い。寒い。
寒い。寒い。寒い。
これからどうすればいいのだろう?
誰も助けに来ないだろう。
周りにはほとんど家など無いらしく、隠れ家のようなスキー場。
人気が無く、貸し切り状態だと聞いた。
他人が居れば、良かったのだろうが。
その赤い温もりで、助かったのだろうか。
その赤い肉で、助かったのだろうか。
その赤い服で、助かったのだろうか。
だんだんとねむくなってきたきがする。
どうしよう。
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