誰かいますか3 | ナノ
彼は考えた末に、居留守を使うことにした。
もしかすると、諦めてくれるかもしれない――そんな、淡い期待を抱いて。
「困るよ、おおい、昭歳? 本当にいないのか!?」
「誰かいますか。」
その声に恐怖を孕んだ声音で彼は答えた。
「いません。」
その瞬間に、彼の周りには火の手が上がった。
何が起こったのか状況を理解できないまま、彼は本能的にドアノブを捻った。
おかしい。鍵は開けた。確かに開けた。だというのに、扉は壁と同じくに沈黙し、全く動く素振りすら見せない。
「助けてくれ! 笹山、助けてくれ!!」
必死に鉄扉を叩いて訴えるが、確かにそこに居る筈の友人は応えない。
先程まで喧しいまでに自分の名を呼んでいたというのに、何故だ何故だ何でなんでだ!?
「それなら、誰も死ぬ者はおりますまい。此処は昔から妙なことが起こった。このような地は焼き払うべきなのだ。」
何処かからそんな呑気な声がしたが、彼にとってはどうでも良かった。
火の手が上がる、優しく溶けたように彼を包む。
髪の毛の焦げる鼻をつく臭い、肉の焼ける匂い、血の蒸発する独特の生臭い香り。
部屋はそれに同調するかのように焼けたにおいを充満させていった。
冷えていた鉄扉は、もはや触れることすらままならない程に熱くなっていた。
「誰か……たすけ、熱い……ささ、ま……死にたく、な…………、」
声はいつしか途切れた。
彼と友人を隔てていた扉。
熱く焼けた彼。
冷えた目でドアを見つめ、踵を返す友人。
「さっきから纏わりついていた声も消えたようだし、帰るか。
成仏してくれよな、誰だって他人よりも、自分が可愛いんだから。」






「誰かいますか。」
笹山は自分の部屋で確かに聞いた。
あれは、昭歳の声じゃないか…………。
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