武士参三 | ナノ
「ほら、見せろよ。」
「あ、おい!」
袴の裾を捲り上げられる。
「・・・腫れてるじゃないか。」
紅蓮が怒った顔でおれを睨む。
「済まない・・・仕事には影響が出ないようにする。」
おれがそう言うと紅蓮は益々眉間に皺を寄せる。
「違うよ!俺は心配してるんだ!」
「心配?仕事の心配はしなくていい。なんとかしてみせる。」
おれが心配をさせぬように言うと、紅蓮は益々怒る・・・いや、泣き顔になる。
「だから!・・・おれは滝澤のコトが心配なんだよ!仕事なんかより・・・滝澤はいっつもムチャするから!」
何故、そんな顔をする?
何故、そんな目で見る?
「無茶などした憶えは無い、おれは―――「あーはいはい、おとなしく寝て下さい。」
松本に無理矢理寝かせられる。足を畳んだ座布団に置き、診やすくされる。
「どれ。・・・・・・これでよくあんなに歩けましたね。」
「そんなにひどいの!?治るのかよ!?」
紅蓮がやたらと焦ったように聞く。
「ああ、安静にしてれば治るのに一週間はほどですかね。」
「!そんなに休んでいられるわけが無い・・・!」
「まあまあ幸い軽い方ですし。あなたも多少医術をかじってるのならわかるでしょう?」
松本に冷めた声音で宥められ、口を噤む。
「『足首を捻挫すると、骨折より始末が悪い。』という言葉、知ってるでしょう?」
捻挫、というと三日もすれば治るような印象だが、うっかり悪化させると骨折よりも質が悪い。後々残ることもある・・・。
「・・・ああ。」
「わかってもらえたなら良かったです。じゃあ、手当てしましょ。」
「・・・頼む。」
湿布を貼られ、足を固定される。
「はいっ、とりあえず、なるべく安静にして。捻挫した左足を決して使ってはいけませんよ。治りが遅くなりますから。
特に斬り込みはしないでください。一週間後、一応診せに来て下さいね。」
「・・・ああ。」
・・・斬り込みも、動く事も儘ならぬとは・・・役立たずではないか。
仕事しかできない。組のため谷在家のために尽くすと・・・そう決めたのだが・・・。
そもそも副長ともあろうものがこのような・・・。
「ほら、おぶるよ。」
「おぶっ、!?」
紅蓮が唐突に信じられぬような事を言う。
馬鹿にしているのか?・・・否、優しさなのはわかるが・・・。

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