武士参二 | ナノ
「まっつもーとー!居るー?」
・・・着いてしまった。
紅蓮が戸を開けて大声で松本良順先生を呼ぶ。
「そんな大声で呼ばなくとも・・・と、紅蓮隊長?滝澤隊長も・・・斬られたんですか?」
松本が驚いたような顔をする。松本は偶に真撰組に健康診断やかなりの大怪我をした時に来てくれる人だ。
因みに正体は秘密らしい。
「滝澤がさっき転・・・、事故に遭っちゃって。頭打ったんだ。」
・・・気を遣われると余計に恥ずかしいのだが。
「そりゃあ大変だ。隊服では何でしょうから、こっちへ。」
松本に奥間に案内される。薬の匂いがあちらこちらから漂っている。
「はいっ、二人とも座って下さい。・・・どれどれ?」
髪を掻き分けられ、頭を見られる。
「どうかな?」
「ん〜・・・ちょっと切れてるけど、まあ大丈夫でしょう。一週間もすれば痛みは引きますね。頬のは丁度、良い薬がありますから。」
そう言い松本は薬棚から幾つかの瓶と乳棒、擂り鉢を取り出す。
ごりごりと薬を作る音が響く。
「あ、紅蓮隊長、そこのおしぼり濡らして滝澤隊長の頬拭いてくれます?」
「ああうん、これね。」
パタパタと廊下を行き、濡らしたお絞りを持ってきた。
「ちょっと痛いかも。」
「ああ・・・すまん。」
痛いが、口に出せば負けた気がしそうなので口をキュッと結ぶ。
松本が調合した薬を絆創膏に塗り、拭い終えたおれの頬に貼る。頭も消毒された。
「ありがとうな、松本。」
紅蓮が何故か礼を言う。
「ありがとう。代は是に。」
おれがお代を渡し、去ろうとしたところで引き留められる。
「待って下さい。」
「・・・なにか?代が足りなかったでしょうか。」
「違います。まだ終わってないでしょう。」
松本が呆れた、といった顔でおれを見る。
「え?」
「いや・・・もう終わっただろう。」
おれが誤魔化そうとするも、医者としての目と誇りが許さないのか・・・。
「足。少し引きずっているでしょう。」
「・・・この位平気だ。」
「足怪我してんのか!?ちゃんと手当てしないと!」
「なんでもない。」
「本当ですか?じゃあ見せて下さい。何でもないなら見せてくれても良いでしょう?」
「・・・・・・。」
そう言われると反論しようにも出来ない。何も無いなら見せたところで不利でも何でも無いのだから。

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