武士参 | ナノ
「あとは・・・秋山の櫛か。」
賑やかな町。おれは勝負に負けて買い出しに来ている。
しかし勝負の内容が如何せん納得いかぬ。何故におなごについての問答合戦なのか・・・。
「櫛は・・・近江屋に売っていたな。」
近江屋は三つ先の角を右に曲がるとある店だ。
化粧品や着物などが置いてある。
「っ、とっ!?」
角を曲がろうとしたところで、石にでも蹴躓いたのか、前のめりに倒れる。
「!」
前には、着物が。このままでは人にぶつかってしまう。いや、巻き込むわけにはいかん!
身体を出来得る限りにひねり―――避ける!
「ぐっ!!」
頭と、頬と、足首に衝撃。
「だっ、大丈夫か滝澤!」
「つっ・・・だ、平気だ・・・・・・。」
頭を壁に打ったので、なかなかに痛い。
・・・ん?というか、今おれの名を・・・。
「ほっぺた切れちゃってら・・・傷残らなきゃ善いけど・・・立てるか?」
見上げると・・・六番隊の赤井紅蓮だった。
「すまん。其方こそ怪我は無いか?」
「ううん、無いよ。ほら。」
手を差し伸べてくる。立て、ということか。
立ち上がろうとして、足に激痛が走る。
其れでもなんとか立ち、大丈夫だと告げる。
「なら善いけど・・・。」
紅蓮が買い物袋を拾い上げてくれる。
「嗚呼ありがとう。」
・・・何故か紅蓮は買い物袋を持ったまま渡してくれない。
「?其れ。」
おれが袋を指差すが、紅蓮は当たり前のように言った。
「俺が持つよ。その辺に医者が居ただろ?頭打ったんだし見てもらわなきゃ。」
・・・出来れば他人が居る時に診て貰いたくはない。
『心配』されるのが如何も苦手なのだ。
ちょっと怪我をしたぐらいで休みを言い渡される事もあるし・・・おれは仕事を出来るというに。
おれには仕事しか無いのに。
「いや、この程度の傷、大丈夫だ。」
おれに嘘を吐くなと言わんばかりに頬と足首がズキズキと痛む。頭を打った所為かまだふらふらとする。
「ばっか、大丈夫じゃないよそれは!つべこべ言わず行くぜ。」
「ちょっ、」
ぐいっと腕を引っ張られながら無理矢理に連れて行かれる。
・・・足が・・・・・・否痛くない痛くなど無い・・・くっ。
なんとか無表情を装いながら行く。

次頁へ
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -