レッド2 | ナノ


初めはまっすぐな目をする子だなと思った。

次に驚いた。
彼女は負けたと言うのにそのまっすぐな目を輝かせたから。

悔しさは、多分、今まで僕が倒してきた誰よりも感じていたように思う。

それにも関わらず彼女は、その多きな悔しさよりも多きな、それこそその感情に無意識に体を打ち震わせてしまうくらい多きな、歓喜を感じていた。

『はじめて負けました!』
彼女の手持ちの最後の一匹、メガニウムが倒れたとき、彼女は慌ててメガニウムに駆け寄り、手当てをしながら開口一番そう叫んだ。

悔しさと嬉しさと驚きが微妙に入り混ざった、綺麗な声だった。

僕はただ見てるだけしかできなかった。

それほどまでに彼女は強くまっすぐだった。










それから彼女は度々僕のもとを訪れるようになった。

どんどん強くなっていく彼女に、彼女なら僕を越えられると、ただそう思って嬉しかった。
何故だろう、彼女より強い人なら、居るのに。
それでも僕を越えられるのは、きっと彼女だと、そう思った。

『あ、レッドさん!今!今笑いましたね!』

『もう一回!もう一回笑ってください!』

『…もしかして照れてます?』

『絶対、あなたを越えて見せますから!』

思えば、あんなに話しかけてくれたのは、ここに来てからは彼女だけだった。





そのときはじめて。
自分の音を発さないのどを、恨めしく思った。



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