苦二 | ナノ
「「「「「!?」」」」」
皆が驚き、信じられない、といった顔をする。
「いくらなんでもそんなこと、」
否定の言葉を漏らす紅蓮を一瞥し、彼は少し難しい顔をして・・・俺に言った。
「残念。だが遠からず、だ。・・・まあ、谷在家署長と山崎先生にはわかると思うぞ?
男になった理由はレナの弁当の所為みたいだがな。」
・・・俺と山崎はわかる・・・?今、山崎先生って・・・。
「俺は・・・誰だと思う?谷在家署長にさんざん迷惑をかけた・・・狂っている奴。これでわかるか?」

[狂っているんだよ・・・俺は、谷在家署長といることも、レナと友達でいることさえ生きていることすら―――]

「!―――おまえ・・・・・・・・。」
わかった。彼の言うことが本当なら。おまえは――――――・・・。
「・・・わかった?」
彼は口の右端を吊り上げてわらった。
「おまえは、「言うな。」
殺気立った目で首の真横の刀を微かに動かす。
「名前を呼ぶな。言わない約束だろ?」
「・・・悪い。」
そうだった。俺は迂闊だった。
「ところで刀を退けてくれないか。」
「ああそうだった。・・・余部先輩にやられたら怖いもんね?」
「!・・・・・・。」
余部はどうやら  を倒そうとしたらしい。余部が  を睨み、俺の方を見た。
俺は目で「止めてくれ。」と制すと、余部は殺気を抑えた。
そして  は浅井と俺に向けられている刀をしまった。
「あ、悪いが紅蓮、谷在家署長に刺さっている鋏、ちょっと抜いてくれない?」
「あ、ああ・・・。」
紅蓮が俺に近づき抜いてくれる。壁に刺さっているので大変そうだが・・・。
「なんでおまえが・・・、」
・・・視線が俺と  に集まってる。これではあまり詳しくは尋ねられなさそうだった。
人払いもできるが、
零名君は薬を作った張本人なので、どのみちいてもらわなければならない。
  のことを教えても良い範囲で、どう説明すれば・・・親戚というには無理がある。かといってお色気刑事なら何故性格が変わってしまったのかということに・・・。
「はじめまして、かな?滝澤です。俺のことは何も説明はできないんだが・・・まあ、谷在家署長の昔の知り合いで、お色気刑事の分身、とでもしてくれれば良い。」
「分身・・・?」
「そう、みたいなものだ。」
「"みたいなもの"って・・・署長、この人は誰なんですか!?」
浅井が不満そうに俺を見る。
「・・・滝澤の言うとおり、としか言えん。あまり言いたくない話なんだ。・・・そういう約束だ。お色気刑事、なんだ。半分は・・・。」
俺は俯いた。居辛い空気。しかし、逃げるわけにもいかない。
「お色気刑事と思え、とでも云うのですか。」
「まあ、そうだな・・・。」
「このやうな殺気を放っていて目が死んでいる輩をお色気刑事と思えなど!
こいつは信用なりませぬ・・・!!」
余部が珍しく不信感を露わにして言った。
「そんなことは、「良いんだ谷在家署長。まあ説明するには難しい話だからな。今だって皆頭が混乱しているわけだしな。それに余部先輩の言うことも尤もだ。」
・・・・・・。滝澤は無表情で淡々と言った。その内にある感情を思うと・・・胸を掻き毟りたい衝動に駆られた。
「・・・とにかく。ここで争っていても仕方がない。零名君以外は仕事に戻りたまえ。早急にだ。それから今の話は『特別課』以外に漏らすな。混乱を招く。」
「「はい。」」
「・・・御意。」
余部はまだ怪訝そうな顔をしていた。零名君は不安そうに俺の顔と浅井達を交互に見る。
「署長。」
「ん?なんだ。」
俺を呼んだのは山崎だった。
「あとで詳しくお話を聞かせてくださいね。」
山崎が絶対に、と真剣なまなざしで俺を見る。
「わかってるさ。」
それだけ言って返すと山崎は出ていって扉を閉めた。
「それで一応・・・滝澤にはDNA鑑定を受けてもらうが・・・いつになったら戻れるんだ?」
「えーっと・・・媚薬が性転換薬になったのは計算外なので正確なことはわかりませんけど・・・



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -