苦一 | ナノ
・・・一体誰なんだ、彼は?新署員なんて話は聞いていないし、これだけ美形なら尚更顔は憶えている筈だしな・・・。
「あー、ちょっと失礼。」
もしかすると身分を証明する物を持ってるかもしれない。
俺が布団を退けようとした、その時。
「っ!?」
何かが俺のすぐ横を通り過ぎたかと思うと、今度は足元めがけてなにかが狙ってきた。
「なっ・・・!」
すんでの所で避けたが、―――動けない。壁に縫いつけられるように。
左腕を見ると、服にはさみが突き刺さっていた。
おそらく他のところも同じだろう。俺は自分の身体を見下ろそうとしたが、見れなかった。
「・・・おまえ、は・・・・・・?」
「・・・谷在家署長、か。此処は何処だ?」
俺の首のすぐ近くには、抜刀された"黒描"・・・お色気刑事のものだ。
しかも目の前の彼は、お色気刑事と同じ、服装。まさか・・・。
「・・・署長!?どうかしましたか!」
浅井が異変に気付き、カーテンを開けようとする。
「待てやめろ―――」
「!」
俺が止める前に、浅井の顔が見えた。その瞬間、浅井の額に刀"憶無"が突きつけられる。
「っ・・・。」
浅井は悲鳴を喉の奥へ飲みこみ、俺の顔を見る。
おかしい事に気付いた皆はカーテンを開け、この状況に目を丸くした。余部はいつも通り無表情だが。
「医務室か。・・・浅井。紅蓮。余部先輩。レナ。山崎。・・・谷在家署長か。こっちが不利だな。」
彼が悪戯っぽく笑いながら言う。零名君をレナと呼ぶのは一人しかいない。
「まさか・・・やはりお色気刑事、なのか・・・?」


次頁へ
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -