風待ち三 | ナノ
「あ、そういえば何か用でも有りましたか?」
「ん?ああ、特には・・・。そうだ、斎藤君が寝込んでしまってね。それで明日の一般人の剣道稽古の講師をやってくれると助かるんだが・・・どうだね?」
「良いですけど・・・でもウチで良いんですか?」
「ああ、おまえ剣道は七段だろう?それだけあれば十分だ。」
(ウチ教えんの苦手なんだよなあ・・・まあ、引き受けたもんはやるしかないか。)
「暑いですね、冷たい麦茶でも持ってきましょうか?
それともアイスコーヒーですか?」
「そうだな、麦茶にしておこうか。」
顎を触りながら谷在家が答える。
「わかりました。五分程待っていて下さい。」
「・・・ああ待て!」
お色気刑事が部屋を出ようとした時、ふいに声をかける。
「なにか・・・?やはりアイスコーヒーにしますか?」
お色気刑事が谷在家に向き直り聞いたが、その答えは意外だった。
「いややっぱりソラに頼もう。確か近くで雑用をしてたはずだ。」
「いえわざわざ呼ばなくても、」
お色気刑事が止めるのも聞かず、谷在家は縁側へ行き数十メートル先で荷物を運んでいたソラを呼ぶ。
「ソラ!」
谷在家が呼ぶとソラは走って谷在家のもとへ走った。
「どうしました?」
「悪いが麦茶二つ持って来てくれないか?」
「解りました。少々お待ちを。」
ソラはまた小走りで給湯室へと向かった。
谷在家が部屋の方を向くと、不満そうなお色気刑事の顔があった。
「全く、わざわざソラに頼まずとも良いじゃないですか。」
「ん?良いの良いの、まあ座りたまえよ。」
少し眉根を顰めつつも、お色気刑事はもといた位置に座った。
「こうすればソラも涼めて時間が長くなって良いだろう?」
「時間・・・?まあ確かにソラは今日は外の備品の点検と荷物整理の当番ですからね、相当暑いでしょう・・・一理あります。」
納得した様子でお色気刑事が頷くと、谷在家は天井を仰いだ。
「余部、異常あったか?」
「はっ!ネズミが二匹とアオダイショウが一匹、それから女子更衣室の天井にカメラがありました!」
よもや天井から返事が聞こえるとは思わず、お色気刑事が驚いた顔で固まる。
「いつから居たんですか、余部先輩・・・。」
「二十秒ほど前からだ。」
当然のように言う。
「・・・待て。女子更衣室にカメラだと?」
「はい、犯人は署内の人間と―――」
しばらく三人で事件の話をし、終わる頃には丁度ソラが麦茶を運んできた。


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