プロローグ | ナノ
この世は決して綺麗なものではなかった。
満点の星空。
雨上がりの大きな虹。
空を多い尽くすほどの大木。
空に舞い上がる蝶の大群。
それらを綺麗だと思う心はあったけれど。
けれど、どうしても。
人によって作られたものを綺麗だとは思えなかった。
それらを綺麗だと思うには、少年はあまりに人の醜さを知ってしまっていた。
長い旅の中で少年の心はあまりに疲れ果ててしまっていた。
…それでもその醜さの中にこそ綺麗なものがあるのだと。
少年と同じように、それ以上の距離を歩いてきた少女は言うのだ。