なあ、どうしてそんなに辛そうなんだ。
ユズ、お前は俺の知らないところで、いつもそんな顔をしていたのか。
わからない。ずっと知っているつもりでいたのに、考えれば考えるほど分からなくなる。
俺にとっては妹だった。
大切な、とても大切な家族だったんだ。
なのに、なんで…。
「キリトくんおはよ」
「ああ、おはよう」
いままでとは違い、少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑うユズ。
あの日から、ユズが俺をお兄ちゃんと呼ぶことはなくなった。
名前、といってもここでの名前だけど、彼女にそう呼ばれるのにまだ耳がなれない。
なんともいえないこのむず痒い感じは、不思議と嫌じゃなかった。
寧ろ嬉しくある気がする。
そして、気付いた。
ユズは前より生き生きしているように見える。
あのときと変わってすっきりしたような顔からは、もう彼女にとって、俺は兄じゃないということをひしひしと感じさせられた。
ユズは俺に気持ちを伝えてくれた。
なのに、俺はこのままでいいのだろうか。
彼女が妹でなくなることが怖い。
けれど、このままでいたらユズはきっと傷つく。
それだけは嫌だ。
どうすればいい、俺はどうしたらいい。
彼女にちらと視線を送れば、「どうしたの?」と優しく微笑んでくれた。
なあ頼む、お願いだから
もう少し兄でいさせてくれ。