2014/03/24 | |
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「もう、いい加減にしてください大王、シバキ、いえ、捌きますよ」 「え!?さばく!?もしかして魚とかそっちで!?」 「いいから仕事しろっって言ってるだろうがっ!」 今日も元気に金魚草のボールペンが空を切り裂き高い音を立て、カッと、気持ちよく閻魔殿の太い柱に突き刺さる。今日はまた深々と刺さったものである。ひぃ、と、閻魔大王を始め、鬼灯付きの補佐官だろうが鬼灯以外の補佐官だろうが、平の鬼だろうが、関係なく声を上げた。これは日常と言ってもいいのかもしれない光景だが、ココにいつもいるわけではない存在にとっては大変珍しいものである。 ―これはボーガンの矢かなんかだったろうか。流石は閻魔大王の第一補佐官だ 多少どころかかなり、ずれた完成を持って深々と、二センチほども柱の壁に埋まっているボールペンを覗き込み、合同転輪王はほぉ、と感嘆の声を漏らした。これはこれは本当に凄いものだ。綺麗にまっすぐと穴をうがっている。折ってしまわないように丁重に柱からボールペンを抜き取りつつ、本当に凄いものだと心の底から感心していた。 「鬼灯殿、流石ですね」 「・・・いえ、ありがとうございます」 周りで誰の目にも明らかな地獄の黒幕"鬼灯様"の動向を伺っていた獄卒たちは、珍しく歯切れの悪い鬼神にあれ?と首を捻った。そして、間を置いて、再び首を捻る。どうしてあの十番目の王は、全く恐れを感じていないのだろうか?いささか精神が屈強すぎやしないだろうか?色は白ではあるが同服やら漢服やらが混ぜこぜになってしまったような装いに皮弁に似た冠を被り、整った顔立ちに微笑みを浮かべた青年。 五道転輪庁の玉座に腰を据える第十の裁判官、五道転輪王 「五道転輪王、本日はわざわざ出向いていただきありがとうございます」 「丁寧にどうも、閻魔殿はいつも大忙しですね」 ちらりと、周囲に視線をめぐらし、自身に視線が集まっていることに気づいた五道転輪王はにこりと笑った。それに見ていた獄卒たちは慌て、目を逸らし、それを鬼灯は目ざとく記憶する。普段閻魔大王はともかく、他の王たちを見る機会など少ない獄卒たちにとって、とても珍しい事なのだ、今の状況は。 「五道転輪王、」 「長いでしょう、短くしてくださっていいですよ」 「・・・では転輪王今回の、」 中国の道士の端くれで、ちょこちょこ抜けているというのはあまり知られていない |