2013/10/12
無題
虹灰
だからと言ってどうだという話でもない。
ただこれは俺という一自我が見たことのすべてだ。
俺の主観でしかない、俺の記録だ。
あくまで、俺が感じたことで、俺が考えたこと、
アイツが本当にそうなのかなんて、分かるはずもない。
そうだろ?お前等だって、分からないよな?
最愛の人の感情なんて。
自分の感情さえ正確にコントロールできないのに、
できてたまるかってんだ。
まぁ、それはともかくだ、話を戻そう。
これから、長いような短いような。
淡々とした話をしようと思うんだ。
大丈夫、俺は今、幸せだ。
だから、そんな顔するなって、


まぁ、最初に言っておくべきことがあるとすれば、
2/4、 俺は最愛の人を庇って、交通事故で死んだ。

俺の両親は俺の突然の死に泣いた。怒った。
どうしてお前も助からなかったのかって。
でも、よくやった、良く助けたって、泣いていた。
両親は俺の恋人を決して責めなかった。
寧ろ、良く生き残ってくれたと、抱きしめた。
見苦しいほど泣いて、アイツにすがる両親に
濡れるはずのない頬が濡れた気がした。


両親が俺のために墓を建ててくれた。
「私たちのことして生まれてきてくれてありがとう。」
そんな言葉を残してくれた。
そして、アイツは、俺の家の養子になった。
本人の申し出だった。アイツの母親と兄も頭を下げた。
両親はまた涙を流した。
戸籍上は俺の弟に、なったって、コトだな。
どうせ"虹村"になるんなら、
俺が生きてるうちになって欲しかったもんだ、なんて。


アイツは良く墓に来る。
あの歌じゃないが、俺は別にそこにはいないのだが、
そんなこと伝えるすべもない。
でもその気持ちが嬉しいから、
伝えられたとしても伝えはしないのだろうけれど。
アイツが話すことは、大体、最近の近況だ。
でも俺はいつもアイツの事見てるから、
俺のためについた嘘も、ちゃんと分かってる。
そして、苦虫を噛み潰したような気持ちになる。
苦虫を噛んだことなんて、実際にはないのだが。
近況の中に紛れた、本音を聞いたとき、
どうして俺には、
ただ抱きしめてやるだけの腕さえ
名前を呼んでやるだけの口さえ
何もないのかと、酷く酷く、憎くなる。


アイツが大学生になって、
彼岸や盆以外にもよく俺の墓に行くようになった。
寺の住職さんと友達になる程度に、墓にいる。
アイツは必ず、毎月4日と24日に墓へと向かう。
それは平日であろうと、だ。
 オイ学校サボんな、部活はどうした。
朝、この日は決まって、
雑巾の準備と財布の確認をしている。
実際俺が何言ってもアイツには聞こえないのだが、
時々、本当に、時々、だ、
 「きっと、こうしてると、修造さんは、
  『コラ、ざぼんな、』とか言うんだろうな。」
なんて、呟く。


コイツは生前の俺が過ごしていた部屋で、
俺が置いた場所家具の位置そのままの配置で、
過ごしている。
戸籍上での俺の弟。
生前の俺の最愛の人。俺の永遠の恋人。
両親に気を使って、家事もあらかた一人でやって
バイトもして、気が付いたら、
大学も首席卒業しちゃって、就職もいいところに入った。
エリートもいいとろこだ。
中学時代からは想像もできない。


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