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時節は春。卯の花曇の空は晴れもよし、雨もよし。曇りもまた、風情があり尚よし。今は遠くに霞みを湛えた空模様であった。
男は最愛を共連れて、島で一番『栄えている』筈の、長閑な風景をのたりのたり。そぞろ歩きを楽しんでいる。
「卯の花くたしも、似合いだろう。…か。」
いやはや。この男からすれば空木の空など二の次で、愛おしいおんなを飾りたてるのもの程度、…ぐらいにしか思ってはいなかった。
「どうしたの?」
黙黙と温かさを男に向けていたなまえは、どうやら先程までの男の言葉は耳に届かなかった様だ。音のみ聞き及んでもう一度言って欲しいの、と小首を傾げる。
「…なまえがいるなら、天気なんてどれでもいい。と言ったんだ。」
卯の花は空木。花は白。
さてはて、急に表れた赤い花は…どちらであったか、なんとやら。