今回は…買っちゃおうかな…?
視界の端にちらつくのは、自分じゃ足元にも及ばない美味しくて可愛くて、煌びやかなチョコレート達だ。そしてかの恋人は、いつもおおっぴらに笑っている陽気な男だが、経験豊富で随分と歳上のひとでもあった。
……手作りよりも、あちらの方が似合っているんじゃないか、となまえは思ってしまったわけで。
「シャンクス、その、ハッピーバレンタイン…です。」
「おぉ…!なまえのチョコか?おれのか!そうか!」
有名なホテルシェフの監修、という煽り文に釣られて買ったのはシャンクスの赤い髪色そっくりの赤い小箱だった。いそいそとリボンを解くシャンクスの手元を手伝いつつ、その中身を垣間見る。蓋を開けばディスプレイ通りのハート型が幾つも並んでいた。
「おお…美味そうだ…!」
歳上の男なのにこの時ばかりは少年の様に瞳を輝かせて、ありがとう!と白い歯を覗かせていたのだった。
「すげぇな、まるでプロが作ったみたいだ、」
「えっ。」
「うん?」
「…えーと、これは私が作ったんじゃなくて…」
かくかくしかじか、事のあらましを告げるとシャンクスは苦笑いをひとつ浮かべ、「なまえは考えすぎなんだ」とチョコレートを摘まむ。
「少々形が歪んでようが、塩と砂糖を間違えようが『なまえが作ってくれた』ってのが最高に喜ばしいんだ、おれァな。……ひとつ、好い事教えてやろう。」
男ってのは女が思ってる以上に単純になるんだ、それも惚れた女相手だとしょっちゅう。
そう言って最後一粒をぱくり。うん、美味い。
二粒めは咥えて、なまえに食わせてやる。うむ、可愛い特にその真っ赤な顔と潤んだ瞳が。
「美味いが、そうだな、もうちょっと甘さが足りない。」
足りない分はなまえが補ってくれるんだろ?
既に決まり切った事柄だと言わんばかりにシャンクスは甘くて甘くて仕方ない恋人を引き寄せたのだった。
『シャンクスエンド』
バラティエオーナーシェフゼフ監修チョコレート(8粒入)