乙女は街へ買い物に | ナノ
よかったら私のエコバック使いますか?



「私、エコバッグ持ってきてるんです。老婆心ですけどよかったら使ってやってください。」

  折角のチョコレートを落としてしまうよりは…となまえはバックの中身に手を突っ込むのだった。確かこの辺にあった筈。キャベンディッシュは『すまないね』と一声上げたのだったが、しかしそれ以降何故か苦笑いを浮かべてしまうのだった。

「……なまえ、残念だけどエコバッグはいただけないかな。」
「へ?」
「全く、僕よりも目立つなんて腹立たしいけど…あれは悪目立ちだから勘弁してあげるよ。」
「は、」

  い?と言い切る前になまえは後ろへと引っ張られてしまうのだった。背中には分厚い何かが当たって、首もとには温かい腕が回された。見慣れたジャケットだ、確かこれは少し前にショップで一緒に選んだ彼のものだ。

「おい、トラファルガー公共の場だぞ、ここは。」
「それがどうした、なまえから離れろ。」
「……お望み通りに、悋気持ちめ。」

  なまえも大変だね、それじゃあと金髪を揺らしてかの友人は去って行ってしまった。残された二人であったが…この男、絡めた腕は離してやれど手を繋いでじい、と背の低いなまえを見おろしたのだった。

「随分前におまえを見つけてた、が邪魔するなんて無粋だろう。」
「え、いつから…?気がつかなかったよ、」
「真剣に選んでる顔をずっと見たかった…があの男と話し始めたからな、テメェの女に他の男が寄るのを黙って見るなんて御免蒙る。」

  おれの為のチョコレートを選んでる時なんて特にな。と言い切ってなまえを見つめ続けていた青年は彼女の髪を梳くのだった。

「当日まで気づかないフリをする予定だったんだ。」
「……ふふっ、ありがとうねロー。」

  このまま一緒に帰ってもいい?となまえが頬を染めて見上げれば青年は口角を片方上げて「アァ」と短くも喜色をたっぷりと込めて声を返すのであった。

「もうちょっとだけ、知らないフリしててね?」
「14日は盛大に驚いてやるよ…。驚き過ぎて『なに』しても拗ねるんじゃねェぞ?」
「ええっ、」

  どんぐり眼になった可愛い恋人に満足したのか、喉をこれでもかと鳴らした青年はなまえが買って手に持ったビニール袋を奪ってやったのだった。


『ローエンド』
ブラウニー(+α)
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -