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『辛いですか?』
「やっぱ知ってんだナ」
『まぁ、それなりに』
辛いか辛くないかと聞かれれば、辛くないわけはない。でも、わかりきっていたコトだから、今更 辛いなんて言うつもりもない。
『いつかお二人が、笑いあえるように なればいいですわね』
笑いあえる。そんな日が 果たして来るのだろうか。それを望まないわけじゃないけれど、叶う補償がないのなら、望まない方が 幸せなのかもしれない。
「そんなことよりサ〜、ヒモ女は やたらと奈々チャンに固執しすぎじゃネ?」
『…そう思われますか?やっぱり…』
「だってオレ すっげェ睨まれたし」
『彼女には、私しかいませんから…仕方のないコトです』
「それでダイジョーブなワケ?」
『心配いりませんわ。私にも彼女だけですから』
彼女だけ…その言葉に、やっぱりオレはズキンと痛む。
「壊したいもんだネェ…その壁を」
奈々チャンが作り出す壁を、どうしても壊してしまいたい。もっと近づけたら…と思う気持ちに、もう知らないフリなんて できそうになかった。
『何か仰いましたか?』
「いんや、なーんにも」
近づいて来ないなら、近づけばいい
そう思ってしまうのだから、どうやらこの気持ちは、自分でも止められないみたいだ。
壊したい壁
気付いて認めてしまったら
それを止めるコトなんて不可能だし
止める必要も感じなかった。
こういうのってガラじゃネェけどナ…
→あとがき
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