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「おーおかえり桜チャン」
「刻君!?」
『おかえりなさいませ桜ちゃん』
「奈々ちゃんも!?…なぜウチに?」
刻くんは、桜チャンが心配で…なんて言っているけど、どうやら それは口実らしい。犬と戯れに来たらしいが、実際それもただの口実なんだろう。ただ…犬と戯れてる姿が 妙に可愛らしかったわ…
「そういえば、刻君も異能が戻ったのだな。ロスト中の小さな姿は、本当に寧々音先輩にそっくりだった、さすがは御キョーダイ」
藤原寧々音、彼女に会ったことはないけど、平家から話を聞いたことがある。彼女は、元¨コード:ブレイカー¨らしい。そんなに刻くんのロスト時に似ているなら、とっても可愛らしいのだろう。会ってみたいという好奇心がフツフツと湧いてくる。
「あぁ、そういえば 以前 先輩に刻君のことを話したら、知らぬと言われたぞ。キョーダイ喧嘩も程々に…」
桜ちゃんの言葉を聞いて、少し寂しそうな顔をした刻くん。確か、彼女は彼の記憶がないのだと聞いている。
面と向かって事実を突きつけられたら、わかっていても辛いのだろう…
『桜ちゃん、キョーダイ喧嘩とは 当人同士の問題ですわ。あまり、周りがとやかく言ってはダメですよ』
「あ…そうだな。すまぬ刻君…」
『私とレイちゃんは、幼少期から共に過ごした、それこそキョーダイのようなものですので、よく喧嘩もしましたけど、放っておけば 自然に仲直りできるのですよ?それは、一緒に暮らし 一緒な時を過ごした者同士だからですわ』
「家族とは素晴らしいのだ」
『例え 意識や記憶は曖昧でも、一緒に過ごした時間に嘘はつけないのですから、いつか 分かり合える日がきます、きっと』
私がそう言えば、刻くんは とても驚いた顔をしていた。
『お邪魔してもよろしいですか?』
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