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奈々チャンも異能者だった。
そのことに、驚きを隠せないでいると、奈々チャンの世話にもならないと言って、桜チャンは一人走り出してしまった。それを、春人と大神が追う。
『あらあら、頼っていただけないのですね…私、寂しいですわ』
「とりあえず、あたしらも追った方がいいんじゃね?」
『そうね』
「お嬢様、無理はなさらないでくださいね」
『わかっているわ』
三人は走り出した。
ちょい待ち!!オレのコト忘れてね?
歩幅違いすぎんだから、追いつくワケねぇだろ!!
「ねぇ 桜きゅん、お客サンだれ?すごい音が…」
突然 部屋から出てきたユキちゃんに 攻撃が飛んで行く、しかしそれは あっという間に砕けた。
随分と先を行っていた奈々チャンが、一人戻って来て ユキちゃんを護ったみたいだ。
『ユキさんごめんなさい。うちの成瀬が、漢の意地を賭けた決闘だと言って、皆様と一戦交えているのです…』
「漢の意地〜!!それって、邪魔したらダメだね〜〜〜」
『はい、ユキさんは お部屋に居てください』
「わかったよぉ!!で、そっちの男の子は、奈々きゅんの弟サンかな?」
『え…?』
二人の視線が、少し低い位置にいる オレに向けられた。
「奈々おねぇチャン!なかなか帰ってこないから 心配したヨ」
奈々チャンの服を くいくいっと引っ張って言えば、状況を理解したのか、オレの頭を数回撫でた。
『私を探して、わざわざココまで来てくれたのかしら?』
「ボク、お家に一人で さみしかったよぉ」
『まぁ!それは、ごめんなさい
でも、こんな時間に一人で外に出てはダメよ、刻』
「へ……?」
奈々チャンが、オレの名前を呼んだ。
それだけで、トクンと心臓が波打った。
『ユキさん、弟が来てしまったので 今日は帰りますわ。キャビンアテンダントさんのお衣装は、洗って返しますね』
それでわ、と奈々チャンは オレの手を引いて走り出した。
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