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『清々してんだろ。っていうのは、言い過ぎじゃないですか?藤原先輩』
「何?後つけて来て、あんた実は オレのファン?」
そう言えば、暁奈々は
取り巻きに笑いかけるような笑みを浮かべて オレを見た。
『いいえ、全く。寧ろ 貴方が苦手ですよ。
ま、貴方も私が苦手な様ですけど?』
お相子ですね。なんて全く表情を変えることなく言ってのけた彼女。
「迎えが来るんじゃねーノ、奈々おじょーさま。早く帰んねえと、ご両親が心配されますよ」
タイプじゃないと言われたからなのか、苦手だと言われたからなのか…それとも、オレが苦手だと気づかれていたからなのか。
どれが理由かも わかんねえし
ま、別に知る必要もないけど。
ただ、なんとなくイラっとして
皮肉めいた口調で、言ってやれば
彼女は、きょとん とした表情をした。
『ふふっ…
そんなに嫌味ったらしく言われると、逆に清々しいですね』
「はぁ?」
『うちの両親は、決めれた場所での礼儀さえしっかりしていれば、何も言いませんよ。基本的に 放任主義者なんです。だから、私も 高校入学を機に一人暮らしを始めたのですから』
「一人暮らし?!」
一人暮らしをしてるなんて、全くもって予想外だった。
『ちなみに、普段の会話の中で 両親を
お父様、お母様 なんて呼んだこともありませんよ』
「へ…へぇ」
『なんなら、クソババアと呼んだことだって あるんですよ?』
「…マジ?」
『ええ。
パーティの時は、仕方なく お父様、お母様と呼びますけどね。常に、そのように呼ぶなんて 肩が凝ります』
そう言って 彼女は、イタズラ気に舌を出し、お嬢様らしくない、そこらへんにいる奴と変わらない、純粋な笑顔で微笑んだ。
「奈々お嬢様!!
何一人でフラフラしてるんですか!!」
『あら、見つかってしまったわ』
「全く!いつもいつも、どれだけオレに心配かけたら気が済むんだ。この、お転婆お嬢様は…」
『成瀬、ごめんなさいね。でも、貴方の過保護さは 時に気持ち悪いわ。非常に』
「んな!!お嬢様?!
き…気持ち悪い…?」
相当ショックだったのか、成瀬と呼ばれた 執事らしき人物は、ガツガツと車に頭をぶつけながら、何かブツブツと呟いている。
『あら、見苦しいものを見せてしまって ごめんなさい。彼、いつも こうなんです』
「あ…そう」
『藤原先輩』
「ナーニ?」
『私のことを嫌うのは勝手ですけど
あんなに、あからさまに嫌いなオーラを出されると、さすがに少しヘコんで しまいますわ』
「あ、いや…そういうワケじゃ…」
オレって、そんなに わかりやすかった?
『少しは、誤解が解けていたらいいのだけど』
そう言って、彼女は執事を掴み車に押し込み、そして自分も後部座席へと座る。
去って行く車を見ながら
もう少し、彼女を知りたくなった。
苦手なあの子
明日の朝は、おはよう と
言ってみようかな。
→あとがき
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