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イタリアでもとても有名な豪邸
そんな豪邸のテラスで、優雅に晩酌するのが 私の日課


無駄な雑音がなければ、今日も気持ちよく このお高い酒で1日を締めくくることができたのに。


『ねぇ?クロス元帥殿』

「雑音ってのは、失礼な話だな」

『よりにもよって、弟子のお守り?』

「そうだ」

『教団に戻れって?着せ替え人形になりに?』


エクソシストとして 働いている以上、教団に戻るのは当たり前のことだ。

でも、私は かれこれ一年半は戻っていない。


別に教団が嫌いってわけじゃない。
他のエクソシストの面々も嫌いじゃないし、科学班の皆や、探索部隊の皆も嫌いじゃない。


『リナリーのきっつい蹴りを喰らうか、彼女の着せ替え人形になるかって言われたら、そりゃあ命が惜しいからね、人形になるしかないでしょ?それが目に見えてるから帰るのが嫌なの、わかる?』

「そりゃ、自業自得だろ」

『仕方ないでしょ、ここのお坊ちゃまが 熱烈なアプローチかましてくれちゃったんだから。悪い話じゃないしね、こんな豪邸でのびのび自由に暮らせるってのは』

「いいご身分だなぁ、お前にお嬢様が務まるとは、予想外だった」


ゴーレム越しの声でもわかる、相当に 私を皮肉ってるってのがね。


『男1人誑かしたくらい、貴方に比べればマシだと思うけど?貴方は、失踪歴で言えば私の遥か上をいく。おまけに 様々な地域で愛人を作りまくる、とんでもない悪魔ときてる』

「いやぁ、モテる男は辛い」

『全然辛そうに聞こえないけど?』

「ま、とにかく頼んだ」


その言葉を最後に、通信は途切れた。


この絶景を眺められるのも今日が最後か…
そう思っている時点で、私は彼の言う通りに教団に戻ってしまうのだろう。


『偶には逆らってみようと思うのだけど、やっぱりダメね』


ま、弟子ってのに会ってみたいと思っているのも事実だ。

あのクロスが師匠だなんて、どんな捻くれ者の下衆野郎なのだろうか。少し興味があるわ


心地いい夜風を肌に感じながら、グラスに残ったワインの最後の一口を口に含み、この景色に別れを告げるように そっと目を閉じた。


『とりあえず、戻ったら その馬鹿弟子とやらを ぶん殴るのが一番ね』










ようなら


私にここは、不釣り合いみたい。

だって、ここは とても平和で
とても時の流れが穏やかだから。





→あとがき



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