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相手が普通の人間だったなら、今すぐに栗山さんを止めて 刺されている人間を助けるのだが、神原先輩を助ける気はない。
何故なら、彼は 半妖だから。
聞く話によれば、不死身なんだそうだ。
それを知っていて、こんな面倒なことに首を突っ込むつもりはない。彼ならなんとかするだろうし、私が出て行ったところで 余計に事が面倒になるだけだろう。
『目的は何かしらね?彼女』
「尻でも触られたんじゃないっすか?」
『多少通常の人間よりも変態だというだけで、彼はいきなり他人のお尻を触ったりしないわよ』
「いっつも、奈々様をエロい目で見てますけどね」
『もう一人の変態に比べたら、百倍可愛らしい視線でしょ?』
「…名瀬博臣…ですよね…」
『えぇ』
「あいつだけは、許せないっす!!
顔を思い出すだけで殺意が…!!」
厄介な現場を目撃してしまったが、私は今後どのような事が起こるのか 期待せずにはいられなかった。
栗山未来という人物の存在が、この後の物語に 大きな変化をもたらすだろうと、不確かながら この時すでに 直感していたのだろう。
*異界士と半妖*
さて 彼女は、果たして善か悪か
私としては、前者であって欲しいが
彼女の纏う空気は、前者であるとは 言い切れなさそうだ。
→あとがき
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