これ以上好きにさせないで(企画小説)
チョコの甘い香りが部屋全体に広がる

「このチョコやっぱうまいネ〜!流石人気No.1商品って感じだヨ」

私の隣に居る刻は独り言を言いながらチョコを食べている

『刻!自習時間に食べ物食べちゃ駄目でしょ!しかも今日は全国模試の日何だよ!?』

そう、今日は大事な全国模擬試験の日
これで学期の評定がついてしまう

私と刻はクラスで唯一二人だけ生物の授業を取っていなかった
だから何時も生物の時は、二人で別室で自習となる

今は私達以外は生物の試験を受けている

私は次の時間に行われる現代社会の試験の勉強をあまりしておらず焦っていた
それに追い討ちを掛けるように先生に8割取れと言われた事で余計に焦っていた

「まぁ良いジャン!チョコは脳に良いしさ」

呑気な事を言って…

『あと10分…どうしよう』

気持ちが焦る

ーピトッー

『ん?』

刻の手が私の頭の方に伸びている

額に何かを押し付けられてた
そこからは甘い香りが漂ってくる

それを手で取って見てみると、銀紙に包まれたチョコだった

「これ食べて少し頭休めなヨ」

『あ…ありがとう』

銀紙を開き、チョコを口に放り込む

チョコの甘い味が口全体に広がる
まるで私の心情を表しているかのように

私は刻の事が好きなのかもしれない

そう気付いたのは最近だ

極最近まで刻なんて恋愛対象として見れるわけがないと思っていた
けれど気が付けば好きになっていた

でも刻が好きだと認めたくない自分も居る

刻は学校でも学校の外でもアイドルかと言うくらい大人気なイケメンだからだ
私には到底釣り合わない
それに、刻は私の事なんてクラスメイトとしか思っていないだろう

顔が赤くなっていないか心配になりながらもチョコを少しずつ溶かしながら現代社会の教科書を捲っていた

ページを捲りふと目に入ったのは、着物姿の結婚式

『…結婚式だ』

「ん?結婚式?」

刻が私の教科書を覗き込む

『何で女の人って三角の大きい帽子みたいなのを被るんだろうね…』

「さぁ…でもいつかはなまえチャンも着るんだヨ?」

『わっ私は…今の所結婚する気無いし……』

テンパってこんな事を言ってしまった

『だって、私彼氏いないし…それに私と結婚しようと思ってくれる人なんていないよ……』

「…そんな事無いんじゃないかナ?」

『え?』

「ほら、今居るかもしれないヨ?……ちゃんと気付いてくれないと、いつの間にか居なくなっちゃうかも」

『居る訳ないよー!生涯孤独だよ、私はさ!』

何を言っているんだろう

「生涯孤独になんかさせないヨ」

『刻が友達で居てくれれば生涯孤独にはならないね!』

私はせめて刻とは友達で居たい

釣り合わない友達だけど、それでもいい

「…もう。なまえチャン鈍感過ぎ」

『んっ』

刻は残り1個だったチョコを口にくわえ、私の口に自らの口でチョコを放り込んだ

再び口の中にチョコの甘さが広がる

今度は私の一気に上がった熱でチョコはすぐに溶けてしまった

ーキーンコーンカーンコーンー

試験終了のチャイムが丁度なった

刻は荷物をまとめ、自習室のドアの前に立った

「そろそろ気付いてヨ。なまえと結婚したい人が居るってことをさ……んじゃ、先に戻ってるネ」

私に背中を向け、歩きながらひらひらと手を振り立ち去っていく

私はまだ呆然と椅子に座っていた

刻の事が好きだと認めたくない自分がいつの間にか消えていた

私は刻とは釣り合わない

でも、もう動き出した私の恋の歯車は加速していて止められない

私の心臓の鼓動はピークを迎えていた

いつまでも消えない唇を重ねた時の温もり

頭の中が全て貴方で埋まっていく

他の事は何も考えられない

貴方の事が好きになり過ぎて狂ってしまいそう

『好きすぎるよ…馬鹿……』










もう…これ以上好きにさせないでよ

bkm
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テーマ「人外ファンタジー」
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