真逆
今日は仕事はない
つまり自由だ

「これからどうしようカナ?」

煙草を口にくわえてフラフラと歩く

『や、やめて下さい…』

「そんなに怯えなくてもさぁ、俺らの遊びに付き合ってくれればいいんだよ?」

声がした公園に、女の子とその女の子を囲むように5人の男達がいた

「ほら、俺らと行こうか?」

これは放って置けないネ

「女の子一人に対してお前ら何やってるワケ?」

「あ?誰だよてめぇ」

「じゃあさ…通りがかりの正義のヒーローって事にしておくヨ」

「調子に乗ってんじゃねぇーよ!!」

一斉にナイフを取り出し、俺を囲む

俺は面倒くさいと思ったので目線を鋭くして男達を睨みつけた

「……消えろ」

「…ちっ、お前ら行くぞ」

「この悪(クズ)共が…(異能使わなかっただけいいと思えヨ)」

ふと目線を落とすと座ったままの女の子がいた

「ダイジョウブ?」

女の子に手を差し延べる

その手を掴んで女の子が立ち上がった

『ありがとうございました!…貴方に助けてもらわなかったらどうなっていたか…』

にこりと笑った顔は凄く可愛らしくて、俺の胸を締め付けた

「お礼なんていらないヨ…ところでさ、これからどうするの?」

『家に帰ろうかと思っていたんです』

「じゃあオレが送っていってアゲル」

『そんな!?悪いですよ!』

「いいから!また襲われたら困るしネ!」

俺は何とか女の子と一緒にいる時間を確保出来た

「そう言えば、名前知らなかったネ。オレは刻っていうんだ」

『刻さん…格好いい名前ですね!私はなまえです』

「へぇー。可愛い名前ジャン!凄く合ってるよ」

彼女とは話す間に打ち解けていた

『刻くん、閉成学院高校だなんて凄いね』

「そんな事ナイヨ?家から一番近かったから選んだだけだし」

そんな他愛もないことを話しているうちに彼女の家に着いた

『お茶でも飲んで行かない?』

「んじゃ、お邪魔させてもらうネ」

彼女の家に入りリビングに行くと、とても片付いていて綺麗な部屋だった

『お父さん、お母さん、ただいま。今日は友達を連れてきたんだよ』

彼女は両親であろう人達の写真に向かって話し掛けていた

「それ、なまえチャンのご両親?」

『そう。……私の両親は通り魔の事件に巻き込まれて死んだの。この家は両親が私に残してくれた物…。一人で住んでるんだけどね』

悲しそうな笑顔を浮かべていた

俺ならすぐにでも悪として裁きの対象にしているだろう

彼女はどんな思いをしているのだろうか

「その犯人、捕まった?」

『うん、すぐに取り押さえられたよ』

「恨んでないの?」

『凄く恨んでる……殺したいくらいにっ!!でも、私はもう誰も殺されて欲しくないの。赤の他人であろうと、殺人のニュースを見る度に心が痛む…』

「ねぇ………もし、オレが人を沢山殺していたとすればどうする?」

「刻くんが人を殺しているとかは良く分からないけど……刻くんは私にとってのヒーローだから」

オレに向けられた何の罪もない、ただひたすらオレを信じていると言っているようなその無邪気な笑顔

そんな笑顔を俺は……

「………守ってやりたい…このオレが、ヒーローがその笑顔を…な?」

小さな声で言ったために、彼女には聞こえていなかった

『…でもどうしてそんな事聞いたの?』

「それは………なまえを守れるヒーローになってから教えるよ」

『え?』

「……何でもないヨ!!」

何人もの悪を裁き、殺してきている俺には幸せにすることは出来ないかもしれない

でも、俺は守ってみせるヨ……俺の大好きな、大切なその笑顔を……ネ

bkm
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テーマ「人外ファンタジー」
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