普段の彼が好き


今日は一也とのいつぶりかのデートの日。
ちょうど一也がインナーとかその他諸々買いたいって言ってたから、一緒に買い物することになった。
久しぶりに見る一也の私服、ほんと何着てもイケメン過ぎて眩しい。

「お待たせ!待たせちゃったかな」

「平気、俺もさっき来たとこ」

「そっか、じゃあ…行こう?」

「ん、その前に…はぐれないようにしないと、な?」

そっと差し出された手を抵抗なく握って、それだけで一々嬉しくなって、幸せ感じてる。
一緒に歩いてる最中にも、隣に一也がいてくれることが夢みたいで気持ちが浮ついてる。

せっかくの休み、せっかくのデートだからどっか遊びに行こうって話も上がった。けど私は一也の買い物を優先した。
だって、せっかくの休みなんだから自分のために使ってほしい。

そりゃあもちろん遊びにだって行きたい、けど強制はしたくないから。
一也にとって一番大事なことは私にとっても大事なことだから、野球やってる一也が好きだから、その野球に必要なものだったら手に入れなきゃ。

「なまえさー、ほんと変わってるよな」

「…何それ馬鹿にされてる?」

「はっは、褒めてんの」

「どうだか」

「ほんとだって。
普通女の子って自分優先してほしいもんだろ?けどなまえはさ、私は2番でいいって感じじゃん」

「まあ、一也から野球取ったら眼鏡しか残らないもんね!」

「うっわ、なまえちゃんヒドイ」

「あははっ!冗談冗談!」

こんなやりとりですら楽しい。
普通は男の子が買い物に付き合って荷物持ちとかしたりするんだろうけど、私は違う。むしろ今日は逆になってる。
さすがに荷物持ちはしてないけど。

教室での一也、部活での一也、プライベートでの一也、ほとんど変わらないけど微妙に違う。
そんな微妙な違いが好き。色んな一也が見れるから。


「お、あの服お前に似合いそう」

「え、どれどれ?」

「あれあれ」

一通り一也の買い物が終わったから、二人でぶらぶら歩き回る。
買わないけどちょっと高めな洋服屋に入っては試着してみたりその場で合わせてみたり、お店の人からしたら嫌な客かもしれないけど私達はウィンドウショッピングを楽しんだ。


「次はどこ行くかな」

「んー…どうしよっか」

「…あ、じゃあもう1か所付き合ってもらってもい?」

「え?うんいいけど…どこ行くの?」

「眼鏡屋」

「眼鏡屋さん?」

「そうそう、ネジ緩んできてるからちょっと直してもらおうかなってなー」

なんかよく分かんないけど緩んでると不便なんだって。てなわけで最後に眼鏡屋さんへ行くことになった。

「いらっしゃいませ、ただいま無料でお持ちの眼鏡の洗浄サービスをしております。数分で終わりますのでこの機会に是非いかがですか?」

「眼鏡の洗浄だって一也!無料って言ってるし洗ってもらったら?」

「まあ…眼鏡直してもらうついでなら」

「ありがとうございます。ではそちらの眼鏡をお預かり致しますね」

「うわ、何も見えねー…」

「あはは、一也のパーツが足りない」

「パーツってお前な…」

眼鏡かけてる一也は格好いいけど、眼鏡取った一也も格好いい。ほんとこれだからイケメンは困るんだよね。
でもやっぱり眼鏡がない一也は何か物足りない感じがする。

見えないから自然と目細めてしかめっ面になってるし。

…そういえば、一也っていつも同じ眼鏡かけてるよね。あとスポサン。
他の眼鏡かけてみたらどうなんだろう?

「…ねぇねぇ一也、これかけてみて」

「は…?なんで」

「イケメンはほんとに何でも似合うのかなーって思って!」

「…意味分かんないんだけど」

「お願い!今日買い物付き合ったお返しってことで」

あんまり乗り気じゃないけど、そういうことならってその辺にあった赤フレームの眼鏡を手に取ってかけてくれた。
いつもの四角い黒フレームが赤フレームに変わった感じ。

「…ど?」

「…うん、普通に似合ってる。次こっち!」

なんか眼鏡一つ変わるだけでも違う一也が見られるのが面白くて、次から次へと違う眼鏡をかけてもらった。丸ぶちとかふち無しとか、フレームの色違いとか、色々かけてもらったけど…さすがイケメン、全部似合ってた。

けど結局一番似合ってる、というかしっくりくるのは…

「お待たせしました、お客様」

「どーも。
あー…やっぱこれが一番だわ」

「ふふ、そうだね。それが一番しっくりくる」

いつもの眼鏡だった。

そして改めて思ったのは、色んな一也が見たいって思うけど結局はいつもの一也、野球やってる彼が一番好き。

だから私は彼の邪魔はしたくない。
けど支えてあげたい。
辛いとき、苦しいとき、一緒にいてあげたい。

そしていつまでも野球が好きな一也で、野球やってる一也であってほしい。

まあ、たまには私にもかまってほしいけど、ね。

「今日はありがと、一也!」

「いや礼を言うのはこっち、付き合わせちまってごめんな」

「ううん、いいのいいの。
私は私でいい収穫あったし」

なんだそれ、なんて言いながら笑ってる一也に軽くキスをおみまいしてやって、逃げるように私は走って帰った。

追いかけては来なかったけど、代わりにメールが来ててそれをすぐに確認した。


内容を見てにやけてしまったのは、内緒。



"次会った時覚えてろよ
倍返しじゃ済まさないからな?"


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