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「あれ?猫澤先輩の正体に迫る会はやめたの?」

リビングルームに集まる皆の中に猫澤の姿はない。お茶を飲みながら就寝前の座談会をしているようだった。

「にしても、ハルヒは大丈夫かねー」

「どっちの意味で?」

「どっちも」

具合悪い方か、女としての自覚が足らない方か。それはどちらも皆の心配要素となっていた。

「大丈夫よ、環と鏡夜のお説教があるはずだからね」

その二人と仲の良い唯一の女子はカモミールティを飲みながら呟いた。そしてすぐに何かを考える様にカップを置いて目の前の花瓶に目をやった。

「…でもね、自分、ハルヒちゃんの気持ち分からないでもない」

「「どういう事?」」

「…ほぼ毎日皆と一緒にいるでしょう?男に混ざって生活。皆は紳士だし、女の子が自分を見てきゃあきゃあ言う。やっぱりそうなると女と言う意識は薄れてくるんじゃないかなぁ。ハルヒちゃんは亡くなったお母様よりもお父様と一緒に居る時間の方が長くなって、しかもオカマさんでしょう?尚更性別なんて関係無くなるだろうし、大事なのは性別じゃなくて、人なんじゃないかな。それに楽しいと性別なんか忘れそうになる」

確かに竜胆の言う事も一理あるだろう。そして気になるのは、それが竜胆も同じなのだろうか、という事。

「竜胆ねぇも」

「忘れるワケ?」

光と馨の素直な言葉に竜胆は苦笑いを見せた。

「…私は忘れるかもねぇ」

リビングルームの扉が開き、そこには鏡夜が居た。鏡夜は軽く手を挙げて自らコーヒーの準備をしていた。竜胆の視界に自分の右手首が映り、隠すように左手でそれを握った。

「…“牡丹”と呼ばれている内に、皆と楽しく笑っている内に、女だとかいう以前に自分が“竜胆”だと言う事を忘れそうになる時がある。バカな話よ」


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