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「うん、日焼けはしないまま常夏の海を味わえるのは良いけれど、もっと花に囲まれた様な休憩所はないかしら?女の子はこの場に来て泳ぐだけが目的じゃないはずよ。後現実逃避したい場所をイメージしたようだけど、本当に虫はいない?それに動物を放し飼いにするのはおすすめできないわ。皆が動物好きだとは限らないし」
フルーツミックスジュース片手に喋る竜胆の言葉を次々メモしていく鏡夜。そんな二人を他所にハルヒは汗を拭ってから辺りを見渡した。本日ホスト部は休業。鳳グループ経営のシークレット会員制(貸切)に来ていた。東京都内の地下にあるそこは避暑にはピッタリ。敷地面積はおよそ東京ドームの三倍もの広さを持ち、プール10種の他アトラクションも揃えている。
「穏やかな気分だ…ここにはサービスしなければならないお客様もいない…まさに美☆少年戦士の休息といったところか…ごらんハルヒ。南国の鳥さんがいるよ☆レプリカだけど。何て言う鳥だろうね?」
きらきらさせて話す環と正反対のハルヒの顔はうんざり。そんな二人を横目で見ながら竜胆は目の前のジュースを口に含んだ。
「どうでもいいので帰っていいですか。そして鏡夜先輩の家は本当は何屋なんでしょう」
「それは勿論多角経営というやつだよ。しかしそうだな…共通していえるのはどれも癒し系って事じゃないかな?」
果てしなくうさんくさいと思ったが後が怖いのでハルヒは口を閉じた。
「ハルヒ!ウォータースライダー行こーぜ!」
「つーかお前水着は?うちの新作から好きなの選べって言ったじゃん」
「そーだよ。竜胆ねぇも着てんのに」
視線を向けられた竜胆はヒラヒラと手を振ってみせる。ショートパンツタイプの水着からは惜しげもない程の長い美脚とビキニの上からは夏用の半袖薄手パーカー。普段は見える事のないちらりと見える谷間は妖艶。
「皆この美脚のもとに跪くが良い〜!」
品の良い扇子で口元を隠した竜胆が言うと光と馨はノリ気で跪いた。
「もしかしてハルヒちゃん泳げないの?」
「いえ。人並みには泳げると思いますが、そもそもこういう所あんまり興味無いし、泳ぐ気もないのに着替えるのは面倒だと思う」
着替えているくせに泳ぎもしないで水に濡れる事もない二人が優雅にジュースを飲みながらハルヒを見ているが?それは鏡夜と竜胆の事だった。先程から二人はパラソルの下から出る事はない。
「それに水遊びならビニールプールで充分」
「ビニールプール?」
「このくらいの大きさで空気入れてふくらませて…」
その大きさのプール?これにはハルヒ以外が疑問を抱く。
「バカ、そりゃエアボートだろ。水入れんなよ、浮かべろよ」
「プールだよ、小さい子がよく…」
「ボートだって」
「バカ!ハルヒがプールと思い込んでるんだからプールでいいんだ!」
環のフォローは雑だった。そもそも偏った常識だという事にいい加減気付いて欲しいと思うハルヒだった。
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