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そして本日、アラビア王の間と化した第三音楽室の扉は開かれた。
「いらっしゃいませ」
ポージングしてそう言えばそこに居たのは女性ではない。子供の、しかも男の子だったのだ。
「どうした?迷子か?それとも我が宮殿に何か――…?」
すっかりアラビアの王になりきっている環。男の子はそれを見て目を輝かせた。
「あ…あんたが“キング”…?」
環は自称キングだが、誰にも呼ばれない事を気にしていた。そしてそれを言う男の子が目の前に現れ感動していたのだ。
「初等部5年A組鷹凰子嗣郎!ホスト部キングに弟子入り志願する!」
そして珍しい男の子のお客様は最年少ホスト部見習いとなったのです。環が甘い言葉を囁くその隣で嗣郎は観察していた。いくらなんでも近すぎると思うが、本人達はいたって気にしていないらしい。
「君は孤独という名の海に光をもたらす人魚…!禁断の実を僕に教えた罪深き女神…!」
「どっちかっつーとうちの池のフナだよ」
その言葉にピシリと固まる面々。
「僕そんな見え透いたお世辞言いたくない」
言われてしまったお嬢様は泣きながら出て行ってしまった。これは後日侘びの品を届けなければならないようだ。
「ぎゃははは!よかったじゃん殿ーかわいー弟ができて〜」
「光…光は…そういう弟の方が良かった…?」
「バカ…!世界中探したって馨以上の弟なんているかよ…」
子供になんてものを見せるんだ!この状況を理解出来る程大人じゃないのだから。竜胆は慌てて光馨と嗣郎の間に入った。
「はいはい、お子様は見ちゃダメよ〜」
嗣郎は竜胆をじっくり見た。竜胆はそれに首を傾げて彼の言葉を待つ。
「何でおん――うぐっ!」
先を読めてしまった竜胆は慌てて嗣郎の口を塞いだ。そして彼に目線を合わせるように屈み目を見開いて言う。
「…いい?…世の中には知らない方が幸せな事もあるのよ…?」
その恐ろしい表情に嗣郎は何度も頷き、口から手が離れたと同時に退いた。そしてぶつかるのはハルヒ。
「どうしたの?ああ…いかがわしい人ばかりで驚きましたか?自分もこの人達といるといつか僧侶の様に何事にも動じなくなる気がしています」
さらりとひどい事を言うハルヒを他所に嗣郎は素朴な疑問を抱く。あの人もそうだった。この人もそうだ。だけどあっちは女の格好をしている。この人は男の格好…と、言う事は、
「オカマですか?」
なんとも鋭い子供だ…。子供侮りがたし…!子供と接する機会が少なければ扱いも分からない。とりあえず“ハルちゃんは断じて男の子だと言い張る会”のメンバーはハルヒから嗣郎を遠ざける。
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