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「…竜胆。お前、スペインに行ってから様子がおかしいぞ」

「正しく言うのならスペインに行ってから、ではないわね」

そう言いながら竜胆は荷物を解いていた。鏡夜が珍しく謝ったのは良いけれども、それだけじゃないのよね、気付いて欲しいのは。だからこそ、まだ少し冷たくしている。

「…いい加減教えろ」

「随分と上目線じゃないの」

せめて教えて下さいでしょうが?いつも主導権を握っていられると思っているならそれは大間違いよ?環がハルヒちゃんにするように調子に乗ってるのは鏡夜も同じなんじゃないの?竜胆は心の中で呟いた。

「…何故怒ってる」

「怒ってないわよ?柊竜胆は通常営業です」

あら?鏡夜ってもしかして分からない事とかあるとイライラするタイプなのかしら?まぁ、知っていたけれど。横目で見た鏡夜は眉間に皺を寄せていた。

「…勝手にしろ」

「ええ。勝手にするわ。でもね、一つだけ言わせてくれる?何でも聞けば答えてもらえると思わない事ね。たまには自分で他人の心情探ってみたら?」

私が何をして欲しいのか分かってくれる?私が何をして言ってほしいのか、言葉にしなきゃ伝わらない事もあるだろうけれど、少しくらい分かって欲しいとも思うのよね。

「「えぇー!?そのままケンカしてきたの!?」」

「知らなーい。私が勝手に出て来ただけ〜」

そう言いながら竜胆は手元にあったミネラルウォーターに手を伸ばした。それを一気に飲み干すとクッションを抱いてソファの上に寝転んだ。

「そりゃ鏡夜先輩だってさ」

「意味も分からずに避けられたら」

「「間違いなく怒るよ」」

「何で二人共私の味方してくれないのよー!だって、鏡夜も分からず屋なんですもの」

確かに小さく謝ったのは鏡夜にしては珍しく良かったと思う。じゃあ、言わせてもらうけれど鏡夜は何に対して謝ったの?って話になるじゃない。確かに自分は勘が良い方だから分かるのかもしれない。でも、だからこそ、たまには欲しい言葉があるの。竜胆はクッションをぎゅっと抱え込んだ。

「思ってたんだけどさ、竜胆ねぇは殿に似てる所がある」

「あ、それ僕も思ってた」

「えぇ。環と〜?」

それは素直に喜べないのだけれど。竜胆は不満げに眉間に皺を寄せた。

「どこが似てるの?」

「「大事な事は何も言わないトコ」」


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