174 (1 / 3)
秋人が来る前日の事。皆は奈々子案内のもと、モンセラート修道院まで来ていた。ハルヒから皆に連絡が伝わる。“今夜ホテルに戻ったら鏡夜の部屋に集合”と。鏡夜もようやく理解したのね、と竜胆は小さく笑った。そして次の日の事。皆は秋人と奈々子、そして二人の父親がいるレストランまで来ていた。それは当然“ドン・キホーテ大作戦”の為である。
「須王環――…?」
環が秋人に接触した所から作戦は始まる。
「ちょっと…あんた何やって…」
「奈々子!?」
「須王…?いいえ私はそのような者ではありません。ある時はさすらいのウエイター、またある時は指名率ナンバー1のホスト部キング。しかしてその正体は…!!」
鎧を身に纏った光邦と崇も登場し、環は着替え、そして同じような鎧を身に纏った光馨も引き連れ再び出てくる。
「とらわれの姫を救いにやって来た、遍歴の騎士ドン・キホーテとその一行なり…!」
「不本意ながら臣下サンチョ・パンサ1号!」
「同じくサンチョ・パンサ2号!」
「お供のロバさん!」
「…ロシナンテ」
久々のコスプレにノリノリの五人。その光景を見て呆然とする奈々子とその手を引くハルヒと竜胆の姿。
「とらわれの姫はどこだー!」
「ちょっと…何これ」
「助けに来ましたお姫様」
「さあ、こちらへどうぞ」
そして二人は奈々子の手を引いて走り出した。
「ちょっ、ちょっとどういう事よ、ドン・キホーテって何――…」
「あれ自体に特に意味はないんですよ」
「“とにかく派手に騒いであなたを逃がせ”それが鏡夜先輩の指示なんです」
他の人達は単にああいうのをやってみたかったんでしょうね。バカなんで。ハルヒはそう呟いた。バカとか言うのは流石にひどいわ!私もよく言うけれど。
「外に車を待たせてます。もっとも…あなたが本当にこのまま逃げてよければですけど――…」
「あ…私…」
そこに鏡夜がゆっくり歩いてくる。きっと奈々子を動かせるのは鏡夜だけ。
「…自由に生きたいと思う事を、俺は悪い事とは思わない。俺自身3年前ある男のおかげでそれに気付かされましたからね。だから俺が否定したいのはそこじゃないんです」
ある男ですって。竜胆は鏡夜の言葉に小さく微笑んだ。
[
prev] [
next]
[
bkm] [
TOP]