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それから一行はカルメンの案内のもと、バルセロナを観光していた。そして目の前に並べられる料理に感動を隠しきれない。奈々子おススメのお店でスペイン料理が所狭しと並べられていた。しかも、ここは鏡夜のおごりと言う事で奈々子はワインにまで手を出していた。

「カルメンさんはもう3年もこっちに住んでるんでしょ?」

「スペインはもう結構回った?」

すっかり打ち解け気軽に話す光と馨。そして奈々子は“カルメンさん”と言う事に疑問を持つも答える。

「そうねぇ休みの度に割とあちこち行ってるわよ。元々初めてスペインに来たのが子供の頃の家族旅行なんだけど、10歳くらいだったかな。以来何度も来るようになって、ついにはこっちの大学に進学までしちゃった」

「そんなに魅了されたんだねぇ〜」

「魅せられたっていうかね、スペインには魔物が住んでるのよ」

魔物?どういう事だろうと皆は奈々子の言葉に首を傾げた。

「そういえば誰か街中の水飲み場で水飲んだ人いる?」

「あ、俺飲みましたよ」

「ええっ飲んだの!?」

「ええっ!?」

その驚きに環までも同じ顔をして驚いた。

「そう…飲んだの…手遅れだわ…あなた大変な事になるわよ…」

「えっ!?ええっ!?」

「スペインの水飲み場で水を飲んだ者は必ずスペインに戻ってくる――!」

「ひいいい!」

環は大袈裟に驚いた。別に戻ってきても良くないか?こんなに素晴らしい所なら何度も来たいと思うのだけど。そういう意味で魅せられる、戻ってくる、という意味だろう。

「っていう言い伝えがあってねー☆」

「「なーんだ、言い伝えかー」」

「あら、言い伝えってバカにできないのよ?その土地その土地で生まれた風習や信仰があって、やがてその信仰が風化してしまっても、ちゃんと根付いてるの。知らず積み重なってその土地の“色”になるのよ」

「えっと…文化人類学でしたっけ、専攻…」

「そう。まあ私が興味あるのは民俗学の方に近いかもしれないけどね。私はさー実は民俗学者兼旅人になりたいのよね」

ワインで酔った勢いだろうか、奈々子の口は軽かった。


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